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主催講座12「北海道の水産と漁村」第1回「北海道漁業の動向と生産安定に向けた取り組み」

2023/08/14

 8月10日(木)、主催講座12「北海道の水産と漁村」の第1回「北海道漁業の動向と生産安定に向けた取り組み」を石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、北海道 水産林務部 総務課 水産企画係 係長の伊村一雄さん、受講者は18名でした。
静岡県出身の伊村さんは魚の研究をしたいと思い北海道へ来られたそうです。
伊村さんは、漁業は採捕する漁業と養殖する漁業の二つがあります。このことを頭に入れて聞いて下さいと言って、次のような項目に沿ってお話を進められました。
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1.北海道水産業の動向
2.漁業生産が変動する要因
3.漁業生産の安定に向けて~我々に出来ること~

以下はお話の概要です。
1.北海道水産業の動向
1)北海道の漁業の歴史
・江戸時代から明治時代(北海道が蝦夷と呼ばれていた頃)
コンブやニシン漁が主体。その後、北前船の交易により大きく発展⇒今でいえば情報網であった⇒明治20年頃に電信の発明により通信手段が発達すると情報の独占が出来なくなり衰退。さらに明治24年の東京・青森間の国鉄・東北本線の開通が決定的な打撃となった。
・大正時代から昭和初期
ニシンの漁獲が減り(かっては定置網で100万トン近くの漁獲があったこともあった)、衰退。
イワシやイカを対象にした漁船漁業が主体となった。
・昭和初期から昭和中期
サケ・マス・カニを対象とした遠洋漁業・沖合漁業が発達。
・昭和後期から平成初期
他国の200海里漁業規制(最初はロシアとアメリカ)/排他的経済水域設定により遠洋漁業が縮小。
・現在(日本の周りでの漁業)
ホタテガイ、サケ、コンブなど栽培漁業が中心。
2)我が国における北海道水産業
令和3年の我が国の漁業生産量は417トンで生産額は1兆2,560億円。北海道は、数量で1/4を金額で1/5を占めて全国第1位。日本の漁業は、北海道なくして語れない。
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3)北海道周辺の地理環境
・全国の12.6%にあたる4,442㎞の海岸線を有する。
・日本海、太平洋、オホーツク海と、特性の異なる3つの海に囲まれている。
・対馬海流(暖流)、日本海流(黒潮)(暖流)、千島海流(親潮)(寒流)に囲まれ、寒流と暖流と云う特性の違う海流が流れている。
暖流:温度が高い。塩分濃い。貧栄養。寒流:温度が低い。栄養が豊富。
暖流と寒流がぶつかる潮目では、プランクトンが増殖して魚が集まる。北海道は、この恩恵を受けている。また、潮目は季節により変動する。
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4)北海道周辺の地理環境(海底地形)
・日本海、太平洋、オホーツク海と、特性の異なる3つの海に囲まれている。
・海底は起伏(浅い所と深い所)に富んでおり、武蔵堆や北見大和堆など好漁場が多い。
※北海道周辺は海流や海底地形のおかげで大変良い漁場となっている。
5)北海道の漁業生産量の推移
・過去最高は、昭和62年の305万トン。
・令和3年の漁業生産量は118万トンでピーク時の約40%。
・最初の落ち込みは、ロシアとアメリカの規制の影響によるもの。
・次の落ち込みは、イワシの漁獲減少と各国の規制の影響による。
・かってはイワシが多かったが現在は減っている。
・スケトウダラは、すり身の原料として貴重で、現在は沿岸で獲られている。
・イカ(スルメイカ、ヤリイカ、アカイカ)。スルメイカは、九州から北海道の間を行き来している。
・現在の主な魚種は、サケとホタテガイ(ほぼ半分を占める)
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6)北海道の漁業生産額の推移
・過去最高は、平成3年の4,065億円。
・令和3年の漁業生産額は2,586億円でピーク時の約65%。
・ロシアとアメリカの規制及び各国規制による落ち込みは、生産量の動きと同じ。
・平成15年は、サケとホタテガイが同時に豊漁で加工業界が処理できず価格が下落。
・近年の落ち込みは、コロナ禍による需要の減少で、ようやく元に戻ってきている。
・魚種別ではサケの比率が高い。
・ホタテガイの比率は半分近い。
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7)北海道の漁業経営体数・就業者数の推移
・令和3年の漁業経営体数は、9,560経営体。
・令和3年の漁業就業者数は、22,470人。
・漁業経営体数・漁業就業者数ともに右肩下がりで減少傾向。
8)北海道の漁船数の推移(動力/無動力)
・令和4年の漁船数は、22,250隻。ピーク時の昭和36年66,650隻の約33%。
・無動力船から動力船へ。
・昭和50年代にはほぼ動力船になった。
9)北海道の漁船数の推移(船質別)
・木船からFRP(強化プラステック)船(昭和41年頃から普及)へ。但し、FRP船は20トンくらいまで。それより大きな船は、ハガネ製。
2.漁業生産が変動する要因
・影響する要因として、自然的要因と人為的要因があるが、自然的要因の多くは、我々がコントロールできない。
【自然的要因】
・海洋環境の変化
太陽活動の変化、レジームシフト(気温や風などの気候要素が数十年単位で急激に変化すること)、海流の変化(黒潮の蛇行)、エルニーニョ/ラニーニャ、環境変化に起因する資源変動、回遊ルート変化
・自然災害
台風、爆弾低気圧、海底火山、地震、津波
・有害生物
トド・アザラシなどの海獣類、クラゲ類の大量発生、貝毒プランクトン、赤潮プランクトン
【人為的要因】
・過剰漁獲(乱獲)
漁船の増加、新技術の開発、需要増/価値高騰
・不法行為
密漁、漁獲ルールの逸脱
・国際的(他国)規制
200海里漁業水域、排他的経済水域、思想的規制(反捕鯨)
・環境破壊
工業廃水、生活排水、開発、埋め立て
3.漁業生産の安定に向けて~我々に出来ること~
①【資源管理】
・漁獲圧をコントロール
漁業許可、漁業権、漁具規制、禁止区域設定、禁止期間設定
・漁獲量をコントロール
資源量把握、漁獲可能量(TAC)設定、個別割当(IQ)設定
②【取締り】
・不法行為をさせない
警察、海上保安庁、漁業取締船、相互監視、罰則強化
③【栽培漁業(増殖)】
・人為的な資源量増加
稚魚放流、稚貝放流
④【漁場保全】
・漁場環境の維持保全
清掃活動、植樹活動、漁場整備、密度管理
⑤【資源の有効活用】
・増加資源の有効活用
自然増加魚種の採捕、未利用魚の活用
⑥【養殖業】
・天然資源に依存しない
無給餌養殖、給餌養殖、陸上養殖
◇①~⑥までの各項目の詳細
①資源管理(漁業管理)
・漁獲圧をコントロール
・漁業許可、漁業権、漁具規制、禁止区域設定、禁止期間設定。
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①資源管理(漁獲量管理)
・漁獲量をコントロール
・資源量把握、漁獲可能量(TAC)設定、漁獲量管理
漁獲可能量(TAC)制度
・魚種ごとに年間の漁獲可能量を定め、水産資源の適切な保存・管理を行うための制度。
・平成8年の国連海洋法条約への批准に伴い、「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(TAC法)」として我が国でもスタート。
・平成30年の「漁業法等の一部を改正する等の法律」により、TAC法は「漁業法」に統合。
・現在は、サンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、マサバ及びゴマサバ、スルメイカ、ズワイカニ、太平洋クロマグロの8魚種。
・現在水産試験場では、24種の資源量や資源動向を調査している。
主要魚種の資源評価(2022年度)
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②取締り(漁業取締船)
・不法行為をさせない、定めたルールを遵守させる。
・警察や海上保安庁と連携した漁業取締船による監視。
・相互監視。
北海道の漁業取締船
・函館港―海王丸(306トン)
・室蘭港―ほっかい(59トン)
・釧路港―ほくと(171トン)
・稚内港―北王丸(499トン)
②取締り(罰則強化)
・近年は反社会的勢力によるナマコの密漁が多い。
・不法行為をさせない、定めたルールを遵守させる。
・法令による罰則の強化。
漁業法改正による罰則の強化
・特定水産動植物の採捕 罰則なし⇒懲役3年 罰金3,000万円
・違法に採捕された特定水産動植物の運搬等 
罰則なし⇒懲役3年 罰金3,000万円
・停泊命令等違反 2年 50万円⇒3年 300万円
・無許可、禁止漁業違反 3年 200万円⇒3年 300万円
・漁業権又は組合員行使権を侵害 20万円⇒100万円
③栽培漁業(増殖)
・種苗放流などの人為的行為により、資源を積極的に増やす。
・サケ、ホタテガイ、ウニなど、北海道の漁業生産量の約半分が栽培漁業。
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③栽培漁業(増殖)~サケのふ化放流~
・北海道さけ・ます増殖事業協会及び9つの管内増協で増殖事業(ふ化放流事業)を実施。
・毎年、約10億尾の稚魚を放流。
・放流効果向上の取組(DNA添加餌の給餌⇒稚魚の遊泳力向上に効果)。
③栽培漁業(増殖)~ホタテガイ稚貝生産~地蒔き~
・北海道のホタテガイは、採苗・稚貝生産により成り立っている。
・主な種苗生産地は、日本海と噴火湾とサロマ湖である。
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④漁場保全
・漁場環境の維持保全、漁場整備。
・海岸清掃、植樹活動、ウニ等の密度管理、産卵床の設置。
⑤資源の有効活用
・近年増えているのが、マイワシとブリ。
・有効に活用しない手はない。
⑥養殖業~ホタテガイ養殖~
・北海道の養殖は、餌をやらない養殖。
・稚貝の生産までは、地蒔きと同じ。
・稚貝を出荷サイズまで、カゴ・耳吊りで管理・養成する。
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⑥養殖業~ウニ養殖~
・散布漁協は平成4年、浜中漁協は平成13年からウニの養殖(給餌)を実施。
・令和3年度から浜中町で整備した種苗生産施設を活用。
・身入りの良さや安定供給により、消費地での評価が非常に高い。
・令和2年の実績は、製品重量で約10トン、金額は4億円。
・令和5年7月20日に、「浜中養殖うに」として、地理的表示(GI)に登録。
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 以上が本日のお話の概要ですが、講座タイトルの「北海道漁業の動向と生産安定に向けた取り組み」について大変よく理解することが出来ました。次回のお話も楽しみです。
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 最後に受講者から寄せられたコメントをご紹介します。
「大変聴きやすく分かり易い何よりもおもしろいお話でした。コンパクトな資料とめりはりのある説明、興味深く楽しい時間でした。講師の伊村さんのお人柄、人間性の良さがあらわれていて、次回も楽しみにしています」
「身近な魚ですが、知らないことが多く、面白く聞かせていただきました。漁業関係者の努力もよくわかりました。とても役に立つお話だったと思います」
「北海道は地理環境にめぐまれている事が良くわかりました。魚をたくさん食べま~す。サンマとカキのお話がなかったので次回をたのしみにしています」
「スケトウダラ―ファイルの図でオホーツクで獲れていない?(と疑問を持ったが、質問の回答でよく)わかった。楽しかった」




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