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主催講座4「石狩市を取り巻く地震・津波環境と防災」第2回 地震と津波災害に備える」

2023/07/13


 7月6日(木)、主催講座4「石狩市を取り巻く地震・津波環境と防災」の第2回「地震と津波災害に備える」を石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。講師は1回目同様、北海道立総合研究機構 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所主査の廣瀬 亘さん、受講者は42名でした。
以下、本日の講話内容を紹介します。

◎本日のテーマ
石狩市で想定される地震・津波、どのように備えるか
〇話の流れ
   1.石狩市で想定されている地震・津波
   2.地震・津波に対する備え
   3.災害と向き合っている地域の例(第3回への導入)
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1.石狩市で想定されている地震・津波
   ・北海道の想定地震(ゆれの大きさ予測に関わる)
   ・北海道周辺海域の断層モデル(津波予測に関わる)
1)まずそのまえに~想定地震・津波って?
「どのような規模の地震や津波を念頭に対策を行うのか?」
それを、これまでの地震や津波の履歴、地質学や地形など様々な科学的な根拠をもとに決めたもの。
想定地震を決めていることで初めて、どの程度の被害が出るかを計算し、避難計画、対策のための設備など具体的な対策を進めることができる。

(1)想定地震・津波~それをどう決めるか?
  ①近い将来に起こる可能性が高いもの
  例:千島海溝沖の超巨大地震
    襟裳岬から北方四島の先まで
    (M8.8 程度以上、今後30年以内に7~70%)
  平均活動間隔:約340~380年
  最新発生時期:17世紀(400年前)
             ➞すでに周期を迎えている
 ②対象地域に近く、大きな被害をもたらす可能性があるもの
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(2)想定には限界があることを忘れてはいけない
 ①想定とおりの地震が起きるとは限らない
  地震の起きる場所、規模、断層の動き方にはバリエーションがある 
  例:2011年東北地方太平洋沖地震
 ②計算に使えるデータには限界がある
  計算に使える高精度な陸上・海底地形、地盤データが揃っているのは一部の地域に限られる
  (北海道の地形図の多くは昭和30年代の測量に基づいている)
 ③過去に起きていないタイプの地震、地質学的な証拠の残っていない地震は、想定しようがない(想定する根拠がない)
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          想定に対応した対策・行動にとらわれず、
          できる範囲で「プラスアルファ」の対策を
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2)北海道で設定した想定地震(2011年に決められた)
太平洋沖のプレート境界、日本海東縁の断層、北海道内陸の活断層などから、分布、地震や津波の規模などを基準に設定
  ・陸域で大きな地震をもたらす長大な活断層
  ・海域で大きな地震をもたらす領域
(1)石狩周辺では
基本的に北海道で想定している地震にそっている
断層には2種類ある
  ・太黒線が隣接している
  ・太黒線が隣接していない
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①太黒線が隣接している
地下深くにある活断層本体の延長が地表に達している  
本当に動いて地震を起こすのは地下にある震源断層である
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②活断層がいつ動いたかを調査
地下の活断層が地上に届いているところ(崖や坂になっているところ)をユンボなどで掘ると、狙いが当たれば折れ曲がった地層や段差になって切れている地層を発見できる。そこからいつ動いたかがわかる。
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③太黒線が隣接していない
地上に断層が達していない断層(伏在断層)がなぜわかったか
・下図は石狩平野で、地下の構造を探査した結果わかった軽トラックほどの大きさの車で巨大なマッサージ機のような機械で地面を揺すり、その波が地面の深い所へ伝わり、硬い地層にあたると反射してくる。
 丹念に万点も調べて地層の構造を調べる。
    黒い縞々(地下の地層に相当)が曲がっていたりすると、そこで断層などによる変形が起きていることがわかる。
    西札幌背斜、月寒背斜、野幌丘陵断層帯はそのようにして見つけられた。
    深い所は直接構造を見ることはできないが、活断層調査で推定することはできる。
・ある断層で起きる地震は、大体長さと関係がある
・どのぐらいの長さで曲がっているかで地震の大きさがわかる
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④伏在断層の活動度は全く分からないのか?
~過去の地震からある程度の推定は可能
・前回お話した石狩地震(1834年)のような内陸で起きた地震
(震度5強以上の大きな地震が起きると液状化する)
伏在断層周辺で、過去に大きな地震が起こっている
  ➞今後も地震を起こす可能性が否定できない
~現在の小さい地震活動からも、ある程度の推定は可能
・黄色い小さい〇は、小さい地震が起きた場所を示している
地下に想定されている断層の構造と似たようなところに多く集まっていることがわかる。
・地下の地層の曲がっているところでは、体に感じない小さい地震が起きていて、断層が動いていることは間違いない。
~いつか起きるかも知れないというつもりで備えておく必要がある
2023,4-2,7.png2)石狩の各地域で最大の揺れとなる地震
・旧石狩:西札幌背斜の影響が一番大きい
・厚田区:当別断層の影響が大きい
・浜益区:北にある増毛山地東縁断層帯の影響が大きい
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①石狩:西札幌背斜に関する想定
揺れの大きさ(計測震度)は6.4、6.5、6.6、6.7と連続的になっており、6.5を超えると震度7とされる。震度6強と震度7の境目付近で劇的に揺れの大きさが跳ね上がるわけではない。
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②厚田:当別断層に関する想定
地震の規模:M7.0 程度
地震発生確率:30年以内に、ほぼ0%~2%
平均活動間隔:7500年~15000年程度
最新活動時期:約11000年前~22000年前
・厚田~聚富~生振にかけて震度6強
・液状化が発生する確率もやや高い
③浜益:増毛山地東縁断層帯に関する想定
地震の規模:M7.8程度
地震発生確率:30年以内に、ほぼ0.6%以下
平均活動間隔:5000年程度以上
最新活動時期:不明
・浜益~厚田~生振にかけて震度6強。谷間の低地で揺れが大きい。
・液状化が発生する確率もやや高い

◇ちなみに、千島海溝沖超巨大地震の場合、石狩の辺り
計算上は、大半は震度4(一部で5弱)だが、実際にはもう少し大きくなる可能性はある
~想定にとらわれず、備えをしていく必要がある

3)石狩の各地区での地震の大きさと地盤
2023,4-2,10.png・石狩は、地盤がいいという話では? 
少し離れた活断層による地震でも震度6前後で揺れるのはなぜ?
石狩市の辺り、黄色い部分は砂丘・砂州・砂礫州
少し掘ると砂や砂利が出てくる。5~6000年前は浅い海
砂丘は一般的に地盤がよいとされているので、そこからでてきた話➞そう簡単ではない
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青:そんなに増幅されない地盤
黄:増幅されるが、それほどでもない地盤
オレンジ:やや強めに増幅される地盤
赤:すごく増幅される地盤(同じ地震でも大きく揺れる)
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◇表層の地形の地下に隠れている堆積物
・砂丘や海浜の砂の地下には、地表の砂質堆積物よりも緩い
・内湾や河川成の砂や泥からなる堆積物が隠れている
・いわゆる軟弱地盤というほどではないが場合によっては地震動増幅に関係する場合もある堆積物
〇地震については
近い将来に起きるかもしれない地震~
石狩市では震度4~5弱、最大で震度6強~7の揺れが起こるつもりで準備していく必要がある
*西札幌背斜などの伏在断層についても、その備えで被害をある程度まで軽減できる

4)では、津波はどうか?
(1)北海道が想定した、日本海沿岸の津波浸水想定
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1993年北海道南西沖地震、2011年東北地方太平洋沖地震を踏まえ、大すべり域を設定
~地震による地殻変動も考慮
このモデルで、
・実際に断層を動かしたらどの程度の津波が発生するか
・沿岸でどの程度の高さの津波がいつ到着するか
海底地形、陸上の地形、構造物、津波堆積物の位置なども考慮して計算
〇浸水予測結果は、道のウェブサイトから誰でも閲覧可
 パソコン・スマホでも見られる津波浸水想定マップ
膨大なデータの中から「北海道津波浸水予測」を検索
(2)石狩市に影響を及ぼす断層
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高い津波が予測されているのは、浜益・厚田➞断層に近く、津波を高くするような海底地形
親船や新港辺りは、それほど高くなっていないが5~6m程度にはなる
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濃いピンク:5.9m 堀込んだ港の辺り
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石狩川沿いに遡上する津波による浸水に注意
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本町、親船地区は、想定程度の津波であれば10m程度の高台(砂丘)がとりあえずの避難先、時間的に余裕あるので、海岸から離れた内陸へ向かうとさらによい

〇厚田・浜益:F06'断層(遡上高11.16m、第1波31分)
10mを超える津波、川沿いの遡上
➞谷沿いに内陸部まで入り込む~とにかく高台をめざして避難する
津波到達時間の速さに注意
➞想定されている津波であれば30分程度~できる限り急いで避難行動を起こす

2.地震・津波に対する備え
・平時にやっておくこと
 ~人命と財産を守るための準備
・地震や津波の発生時
 ~人命を守るための行動

〇平時の備え
どんな地震災害が起こるかを知ることがまず重要
◇ハザードマップの確認
・地震・津波だけではなく、より発生頻度の高い石狩川の洪水、様々な風水害にも対応している
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地震(強い揺れ)に対する備え
➞平時に地道に対策を行っていたかどうかで成否がほぼ決まります
津波に対する備え
➞地震発生直後~津波到達までの対応で成否が分かれます

1)平時の備え:人命と財産を守るための準備
・家屋の現状確認と補強
旧耐震基準(~1981年)での設計の建屋
~震度6以上の揺れに耐える設計ではない
 ➞耐震補強を(補助制度あり)
 (石狩市木造住宅耐震改修費等補助金事業)
新耐震基準(1981年以降~)で設計の建屋
 ➞震度6以上の揺れでも倒壊しない設計
ただし!
震度6強以上の揺れが2回3回と続いた場合は倒壊の恐れも
北海道では、湿気による部材の腐朽、最近はシロアリの被害も増えている(胆振東部地震で実例ありに)ので、建物の劣化に要注意
・家具の固定、導線の確保は基本
~避難するためには、できる限り早く、安全なところへ移動できないといけない
 1995年兵庫県南部地震では、動けない状態で火災に遭ったケースが多い
家具などの転倒は、下敷きになる恐れだけでなく、戸外への避難を妨げることもある
寝室など即座に回避行動がとれないところには、なるべくタンスなどをおかないなど思い切った"断捨離″もご検討を!
・固定する場所
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・地震保険の加入
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・非常用品の確保
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・家族との行動の打合せ
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 携帯(LINEやSNS)が使えない場合がある
~家族の連絡先などをメモしておく

・急斜面に側に住んでいる場合~2階で寝る、など地震時に限らず、斜面崩壊が起きた際にも効果あり
~土砂が流れ込む1階で犠牲者が出た事例
2階に居た/寝ていた人が助かった事例がとても多い
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2)地震や津波の発生時:人命を守るための行動
・揺れ始めてから1~2分間:まずは安全の確保
(1)緊急地震速報が鳴った段階で
 ①すでに大きく揺れていたら
 ➞すぐ近くで発生した大きな地震なので、とにかく身を守る行動を
 ②まだ揺れていなかったら
 ➞遠くで発生した地震なので、身を守りつつ落ち着いて情報収集を
◇揺れ始めてから1~2分間:まずは安全確保
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  ③揺れが落ち着いてきたら:避難行動・安否確認など
 *最優先
 津波が来そうな場所では、一刻も早く高台などへ移動
 (石狩の場合、想定津波なら到達への時間的猶予は30分前後、その後も第2波・第3波。ただし30分あるから大丈夫とは思わず、避難行動は素早く・・・)
 ④余裕があれば、さらに高い所へ。安易に戻らない
 *車が渋滞しそうなところでは、歩いた方が速い場合もある
  (信号が点いていない、事故、ルール無視の車など様々な要因)
 *電話はつながりません、大きな地震ならネットも不通になっていることも
  互いを信じてまず自分の身を守る行動を
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    2011年東北地方太平洋沖地震では、死因の90%以上が津波による

(2)揺れが落ち着いてきたら:避難行動・安否確認など余裕があれば
 ・家族、隣近所の安否確認
 ・ブレーカーを落として避難所への移動
 ・(火がついていた)ら初期消火
 ・建物が古い場合、続く大きな地震で壊れる場合があるので、早く戸外へ
 ・津波が来ない地域ならば、場合によっては救急活動への協力も
いわゆる「津波てんでんこ」には、4つの意味がある
[山下(2008)津波てんでんこ 矢守(2012)自然災害科学]
1自分の命は自分で守る(とにかく逃げなければ助からない)
  てんでんこできない人をどうするかは、普段からの準備がより重要
2自分だけでなく、他の人の避難を促す(率先避難者)
 あの人が逃げている、ならば自分も逃げた方がいいのでは?
3大切なあの人も「てんでんこ」してくれるはず
 個人・組織(会社・学校・保育園など)間の、事前の信頼関係があって成り立つ
4「てんでんこ」でいいからね(生存者の自責感の低減)
 亡くなった人から生き残った人へのメッセージ
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*決して、安易な自己責任論ではない。
 「てんでんこ」が悲しい意味を持たないよう、普段から考えとく必要がある
〇「デマ」から自分(他者)を守る
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〇地震発生から数日間
 北海道では車中泊は極めて危険
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(3)いずれ起きてしまう、地震(災害)
100%の安全はない
特効薬的な対策もない
できる対策を積み重ねることで
100に限りなく近づけることは可能
100か0かではなく
助かる確率を少しでも上げるために
日頃からできる対策を積み重ねておきましょう

3.自然災害と向き合っている地域の例
◇洞爺湖有珠山地域(火山との付き合い方)
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◇山麓に5万人近い人口を抱えている
・豊浦町  3,600人  ・壮瞥町  2,600人
・洞爺湖町 8,100人   ・伊達市 32,000人
・洞爺湖には年間200万人以上の観光客が訪れる

2000(平成12)年有珠山噴火
直接の犠牲者こそ居なかったが、避難生活は長期化
(避難指示:3/29~7/28) 
有珠山に極めて近接する地域では、住民が移転
◇有珠山との共存
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◇災害遺構の保存
数十年間隔の噴火では、次の噴火までに災害記憶が喪われる
(有珠山山麓でさえ、2000年噴火の記憶が薄れている)
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◇先駆者 三松正夫
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◇火山マイスター
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第3回 自然災害対策への取り組み見学
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  今日のお話で、地震列島に生きる私たちにとって、平時の備えが大切であることを、廣瀬さんの活動と研究成果を通して学びました。
次回の現地見学では、災害の実際と対策を体感し、学びを深めます。

最後に受講者の感想や意見の幾つかを紹介します。
「花川地区は海岸まで約4Kmの平坦地形で、津波が10mにも達すると海抜4m~5m地域の住宅街は被害が生じると心配していたが今日の講座で海岸線のみと聞いて安心しました」 
「地震は恐いので記憶から消してしまいたいと思うことを、あえて残すことが大事だという意味の深さを知りました。石狩市はあまり被害が無いことに安心してはいけないと思いました」
「スクリーンの図や地図を示しながら、分かりやすく解説してくださいましたが、手元の白黒資料では色分けの意味がなく残念でした。又、平時の備えや発生時のお話は、非常に参考になりました」
「地震や津波の発生時、身を守るためにどの様な行動をとるのがよいか、とても詳しく分かりやすくお話いただき大変良かった。『津波てんでんこ』が何より大切、まずは自分の命を第1にと思うことだと考えることにしました」
「原発の最終処理場、活断層地帯なので驚きです。北海道には適地はないようですね。石狩には救援物資の確保の為に、新港倉庫関連会社と連携しているのは、ありがたいです」
「石狩ってずっと低地と思っていたが、今日のお話で、津波でもそれほど心配することないと感じた。とりあえず安心出来るなと思いました」
「大変聞きやすくわかりやすい専門家のお話で、学べました。具体的なデータや研究の裏付けがあり、地震、災害に対しての構えのようなものができた気がします。今後、地震・災害の話が出るたび本日の講座を思い出すと思います」
「地震・津波に対する平時の備えが必要なことが良くわかったので、今後自分で出来ることから行っていきます。現地見学が楽しみです」
「本町、親船方面も高い建物があまりないので、例の温泉隣の建物も活用出来ないかと思っております。その後、避難所としても。ウチは、大きな家具が無いので、これからはそういう生活(特に高齢者)も必要かと」
「断捨離します。平時の備え本当に必要です」
「こま切れであった災害の情報が、つながった講座でした。今後の対策に役立てます。次回の見学は、講師の方とご一緒とのことで、よりよく分かるのではと期待します」 
「地震・津波災害に備える、地域別に詳しく地質研究所広瀬講師から学ばせて頂き、良かったです。3回目、見学学習の段取りご苦労様です」
「有珠山はH12年以降21年経過している。30周期位というが、もう近いのではないか」
「万一の地震・津波に、判りやすく具体的に教えて頂き、少しでも念頭にして生活していきたい。ありがとうございました」




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