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主催講座11 「北海道経済の現状とこれからの展望」

第2回 「これからの北海道経済の展望」

2016/10/10

 9月29日(木)主催講座11「北海道経済の現状とこれからの展望」の第2回「これからの北海道経済の展望」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、元銀行マンで石狩市産業振興アドバイザーの辻 正一さん、受講者は38名でした。

 辻さんは、冒頭「"北海道の経済の現状と展望"というテーマを頂いておりますが、合わせてマイナス金利にも触れたいと思います。」と話され、本日は「北海道の概観」、「マイナス金利にいたる経過とその内容」、「北海道経済の展望」についてお話しを進めたいと講義内容の紹介がありました。
 
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 辻さんは、「司会の方ら出来るだけ明るくなるような、とありましたので『北海道経済どうなるか』では少し暗くなるので、『北海道経済どうするか』という方向でお話しをしたいと思います」と、第1節「北海道経済の概観」、第2節「マイナス金利」、第3節「北海道経済の展望」の内容で話をされました。

以下、お話しの概要です。
Ⅰ.北海道経済の概観
1 全国に占める北海道の地位
面積        = 83,424 k㎡   全国の 22.1%
人口(2015国勢調査) = 538万人         4.2%
総生産(2013)      =18兆2,688億円      1.8%

*ごく概観すると広い土地に少ない人口、そして第1次産業の割合が大きく1人当たりの総生産額がは少なく、所得額が少ない。
*北海道の外との関係では、出荷額が少なく,物を買う輸入額が多い支払い超過の経済。
*では、どのようにバランスをとってきたか。公共事業で国からお金を持ってくる状況が開拓以来続いてきた。人々の中に国に頼るという傾向が強いと考えられる。

2 全国景況の見通しと北海道経済
* 日本銀行(全国)金融政策会合(2016年7月)
・基調として緩やかな回復。景気回復ベースは鈍化した状況が続くが、その後は所得から支出への循環メカニズムが持続する。
・物価安定の目標である2%程度に達する時期は2017年度中になる。
* 日本銀行・北海道支店(北海道) 
・景気は緩やかに回復している。
・北海道の消費者物価指数は、傾向としてはマイナスが続き、2%の達成はむずかしい。総務省の北海道における前年同月比、
2016年1月=▲0.7、2月=▲0.3、3月=▲0.7、4月=▲0.6、5月=▲0.6
* これの原因はなにか
・8月2日の経済白書では『賃上げが消費に結びつかない。将来不安がその原因』としている。
 
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Ⅱ.マイナス金利時代
1「マイナス金利」への背景
(1) 金融政策
*マイナス金利への背景
・25年4月 「量的、質的緩和」を行う。
・28年1月 マイナス金利の導入。
・28年7月 今後の政策会議で全体的な総括を行うと決めている。
  毎年6兆円の信託を買うと決めた。中央銀行として異例の処置。
・28年9月 マイナス金利だけでなく長短の金利操作も行う。
*大胆な金融緩和
・日銀黒田総裁とアベノミクスと合わせて大胆な金融緩和政策を展開
*アベノミクスの画いた金融緩和のシナリオ
・期待を生み出す政策:お金を増やせば物の値段が上がる。値段が上がる前に物を買ったり、企業は投資をするだろう。デフレから抜けるだろう。
*実際は増やしたマネーが働かない、日銀に貯まる。株価は上がったが、物価は上がらない。
(2) マイナス金利の導入へ
*日銀は28年1月に政策会合
・物価2%以内の物価達成年度を3年に延ばす
・マイナス金利の導入
*アベノミクスは新3本の矢を27年9月に出す。
・国内総生産を600兆に(100兆円の増額)
・出生率を1.8%に
・介護離職者をゼロに~1億総活躍プラン
*量的質的緩和
・量とは、マネーをたくさんだす。
・質的とは、国債だけでなくリスクマネーも対象とする。
*マイナス金利の狙い
・銀行は日銀に預けると損をする、従ってお金を使ってもらおう。
*しかし、一旦円安、株価上昇になったものの物価は下がり、為替は円安に。
(3) 何故マイナス金利なのか
①「量的、質的緩和」の限界
・量的緩和は長続きしないだろう
・国債が不足するだろう
 28年度国際発行額 162.2兆円
・市場金利は既に0%近傍、マネーはジャブジャブで金余り状態
②再び円高がやってくる
・「円高」になると国内企業業績に悪影響
③お金が働かない
・マネタリーベースの残高は25年3月の134.7兆円から12月には193.5兆円まで増加。
増加率は43.6%と前年同月比は25年8月以降継続して40%を超えており、異次元金融緩和措置後の増加が著しいかがわかる。
マネーダリーベース=「民間銀行・企業・個人の保有する現金」+「日銀当座預金」
日銀が出したお金は3.8倍、銀行が貸し出したお金は1.7倍
・道内金融機関の預貯金と貸出残高の比率はどうか。
20年3月43.7% から 27年3月末39.8%と減少している。
④何故投資が伸びないのか
・投資に対して生み出される収益率(自然利子率:もうけの割合)が低く、借金をして投資するより金融資産で寝かせ   ておいた方が得になる(28年5月10日週間エコノミスト)
⑤だから、表面金利をマイナスに誘導して投資の呼び水にする。
・結果、世の中の金利は下がった。住宅ローンは借りやすくなった。
 
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(4) 経済実態への影響
*主な指標は以下のようになっている。
①市場金利: 国債引き受け利率(4月28日) -0.102%
②預金、生命保険、住宅ローン:
預金は 東京三菱UFJ(2/8)  3億円未満定期預金 0.03% ⇒ 0.025%
道内両行      普通預金           0.025% ⇒ 0.001%
保険は 保険料引き上げ、一部商品販売停止
住宅ローン 金利下がり、残高も増加傾向
③株価:乱高下、先行き懸念 
④企業動向:業績は悪化傾向、投資は依然慎重
⑤給与:4月賃上げ慎重姿勢値上げ
⑥物価:目標2%は遠い
⑦消費:節約志向

2 いくつかの問題点
(1) 困ったことが起きている
①利ザヤが少なくなり金融仲介機能が弱まる
②企業の年金や退職給付債務の金額が膨らむ
・積み立て金の金利が下がる
③日本の株式会社の大株主は公的資金
④日本銀行、財務省、銀行の軋轢
・三菱UFJ銀行:国債市場特別参加者資格返上
・三井住友銀行:日銀審議委員退任
(2) 不思議なことが起きた
①マイナス利回りで国債を買う不思議
・日銀が買った取得価格を超えて買ってくれる。
②国債が嫌われ、お金が彷徨う
・大口預金が嫌われるため、リスク資産へ。

Ⅲ.政府への期待
(1) 金融政策
① 日本銀行、9月金融政策決定会合で「総括的な検証を行う」
・金融緩和の強化
② 「ヘリコプター・マネー」
・マイナス金利の国債を発行し、日本銀行が引き受ける。
(2) 財政政策
・アベノミクスの再噴火
新3本の矢、「地方の好循環拡大に向けた緊急経済対策」
 
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Ⅳ.北海道経済の展望
1 経済成長要因
*人口、投下資本、全要素生産性
・人口は減少している:労働人口も減少している。
 石狩市も減少している(2015年国勢調査57,462人 2010年比 ▲1,987人)。
*人を育てる
・ドクターを育てる法科大学院・・・減っている
 駅馬車を何台繋げても機関車にならない
*国家成長戦略では、「農業」と「観光」を重視
・物を売るか、人に来てもらう
 農業の生産性をどう高めるか
・地域の提案力のレベルアップ
 地域発のアイデアをどうやって生産につなげるか。
2 北海道経済と「マイナス金利」
*北海道、道内市町村の金利負担は減るが
*冷めている北海道企業(3月10日北海道新聞 アンケート調査)
・新規の資金調達: 決めた=3.5%、検討した=10.5%、考えない=66.0%
・考えない理由 : メリットがない=33.6%、景気不透明=15.0%、自社業績不振 =16.8%、自己資本で十分
             
3 北海道の「強み」を活かす
*北海道の独自性・優位性を活かす。
*北海道創成総合戦略 (北海道:平成27年度~平成31年度)
ⅰ道産食品輸出 1000億円戦略(平成25年度 576億円)
ⅱ外国人観光客 300万人戦略 (平成25年度115万人)
ⅲ北海道グローバル人材育成戦略
ⅳ北の住まいる戦略
ⅴ北海道型地域自立権型戦略
 
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 最後に辻さんは、ご自身の勤められていた企業のトップの考えやご自身の経験から、経済は、「ひとびとの協働の飯櫃」であることを、社会のリーダーも、また構成する一人一人がもう少し強く認識することが大切な時期を迎えているように思います。と結ばれました。

 講座の開始に当たって司会の方から、「北海道が明るくなるようなお話しを」との注文がありました。北海道の「強み」を活かす展望や一人一人のあり方などについても示され、今日の経済状況のなかでの方向を示された講義でありました。大変ありがとうございました。

以下にアンケートの幾つかを紹介させて頂きます。
・経済の話しは難しいが、分かりやすい解説で理解が進みました。ありがとうございました。
・いつもながら豊富なデータと適確な分析をもとにお話しいただき大変参考になりました。
・辻先生の話は実におもしろい。今知りたいことが話しの中に多くあった。ありがたい。いつも準備などありがとうございます。
・社会性より経済性を優先させる事の危惧を感じます。このバランスをうまく取り、地域消滅にならないように、若い人が結婚し子どもを育てやすい社会ををめざす方向が必要なのではないでしょうか。




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