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講座8『石狩の自然を見る、聞く、歩く』

第1回「なぜ石狩に石油があるのか」~油田を生んだ800万年前の地層と地球環境~

2011/09/02

 8月31日(水)講座8『石狩の自然を見る、聞く、歩く』の第1回「なぜ石狩に石油があるのか」~油田を生んだ800万年前の地層と地球環境~を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、いしかり砂丘の風資料館・学芸員の志賀健司さん、受講者は29名でした。

8-1-2.JPG 始めに石狩の3つの油田(石狩油田、厚田油田、茨戸油田)について説明を受けました。その内最大の石狩油田は、石狩市五の沢~八の沢地区で明治36年から昭和35年まで累計158,111klを生産、最盛期の昭和初期には油井188坑が立ち、年間生産量は10,000klを超えたそうです。

8-1-3.JPG 石狩の油田の概説のあと、志賀さんが紹介されたのは、木星の衛星エウロパの画像。えっ、石狩の油田とエウロパとは、どんな関係があるのだろう?と不審に思ったら、最後に、その結びつきについて大変面白い話が披露されるのですが、それはあとで説明します。

8-1-4.JPG さて本題の「なぜ石狩に石油があるのか」について、「今日のキーワードは望来層(もうらいそう)です」と志賀さん。
8-1-5.JPGそしてお話は①石狩の地形・地質 ②石油・油田はどうやってできる? ③油田をつくった800万年前の地層、という順で進められました。

①石狩の地形・地質
石狩から浜益までの地形は、石狩低地帯、樺戸山地南部、樺戸山地北部、暑寒別山地に分けられる。
・暑寒別山地・樺戸山地北部
標高1000mを超える山地。海岸は、火山活動で出来た岩石(溶岩、火砕岩)が波で浸食された海食崖。
・樺戸山地南部
標高100m~200mの丘陵地をなし、海岸段丘が発達している。泥岩や砂岩などの地層(堆積岩)が波に浸食された海食崖で、1000万年前~400万年前の海底に堆積した地層。

②石油・油田はどうやってできる?
・石油成因説
有機成因説と無機成因説があるが、堆積物中の生物遺骸(特に海洋のプランクトン等)の有機物が主に熱によって変質して出来たという有機成因説が最有力とされている。
・原油産出地の分布と起源
世界の大規模な油田の多くは中東に集中している。また、ほとんどの石油は、中生代白亜紀(1億4550万年前~6550年前)の黒色頁岩(こくしょくけつがん)と呼ばれる、有機物を大量に含んだ(10~20%)黒い泥岩を起源としている。これは、海底に大量に降り積もったプランクトンやバクテリアの死骸が酸欠状態で分解されずに残って岩石となったもの。
・油田をつくる地質と構造
条件①:石油を生み出す(生物の遺骸を多く含む)地層があること→"根源岩"
条件②:石油を集める地下構造があること→"根源岩"と根源岩で生まれた石油をスポンジのようにしみ込ませる"貯留岩"、そして浮かび上がろうとする石油を受け止めて集める"帽岩"という3層構造が必要。
構造としては、背斜(褶曲《しゅうきょく》のうち上に凸のもの)、断層、不整合などがある。

8-1-13.JPG◆石狩の油田は樺戸山地南部の南北方向の背斜軸に存在。

③油田をつくった800万年前の地層~地層と化石と地球環境の変遷~
◆望来層
8-1-14.JPGのサムネール画像今から800万年前~650万年前(新生代第三紀中新世の終わり頃)の地層(アフリカで人類が誕生した時代)
硬質頁岩と軟質泥岩が交互に地層をつくっている。厚さは250m。
・硬質頁岩
大変細かい泥でできた硬い泥岩。主に遠洋に生息する珪藻(植物プランクトンの一種)の死骸からできている。
・軟質泥岩
柔らかい泥岩。主に陸から流れてきた泥(沿岸)でできている。
硬質頁岩と軟質泥岩が交互に地層をつくっていることから、この地が約3000年周期で沿岸になったり遠洋になったりを交互に繰り返すような気候変動があったことがわかる。
・地層の中に"ノジュール"を多く含んでいる。
ノジュールとは、生物の遺骸や砂粒を核として、まわりの地層をまるくセメントのようにカチカチに固結させたもの。大きいものは直径3~4mにもなる。ノジュールの中には化石が入っている事が多い。
8-1-8.JPG◆望来層で見られる化石
二枚貝
ワタゾコウリガイ、トクナガキヌタレガイ、ムカシオオツキガイモドキなど。化学合成群集の仲間が見られる。
これにより、800万年前のこの地は、水深の深い熱水噴出孔・湧水域であったことが分かる。
・化学合成群集とは
太陽光線が届かないような深い海底で、鉱物分を大量に含んだ地下水が湧き出しているところ(熱水噴出孔、湧水域)に生息し、鉱物分をエネルギーとしていて、太陽光の恵みを必要としない生物。太陽の恵みで生きている(太陽を食べる)一般の生物に対して、地球を食べる生物といえる。

 

 さて、最後が、石狩の油田(望来層)とエウロパとの結びつきのお話です。
ハビタブルゾーン(生命が生きていける領域)は、液体の水が存在する所であるが、木星の衛星エウロパは表面が氷で包まれている。また、エウロパは木星などから強い潮汐力を受け10m近く伸び縮みする。そのまさつ熱により表面下は氷が融けて50~100㎞の海となっていると思われる。内部では火山活動もあり、熱水噴出孔・湧水域があると考えられる。このことから、エウロパには、化学合成群集が存在するのではないかと考えられている。

8-1-19.JPGと云う事は、これから見つかる地球外生命は、ひょっとしたら望来層で見つかる化石とそっくりかもしれない?

このように壮大な、夢のあるお話で、志賀さんの今日のお話は、締めくくられたのでした。

受講者からも

「油田ができるまでのいきさつと地層や発見される化石などによる地球環境の変遷が遠い宇宙のエウロパの話しにまでつながって大変気持ちが壮大になりました。内容も分かりやすく次回も参加できればと思います」

「石狩に石油があるのはなぜなのか、大変よく理解できました。来週の現地調査が楽しみです」

「住んでいる基盤が堆積岩の上で生活している。この誕生の一端が理解でき、これに関連して石油の産出につながっていることが興味深かった」

「石狩油田の地層学からの発達を学んだ、非常に理解しやすい説明であった」

などのコメントが寄せられました。

次回は、9月8日(木)エウロパにも生息しているかもしれない二枚貝の化石を探しに行きます。

 




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