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特別講座1 南極大陸~知られざる自然と氷床が伝える古代気候~

2011/09/05

第一部「南極氷床から見えてくる地球環境」
第二部「厳しくも美しい南極大陸―基地での生活」
期日 平成23年9月3日(土) 会場 花川北コミュニティセンター
講師 澤柿 教伸博士 北海道大学大学院 地球環境科学研究院助教
澤柿さんは「氷河地質学、氷河地形学」を通して地球の環境変動などの研究をされておられ、過去に2回日本南極観測隊一員として昭和基地で研究活動に従事されておられます。また、来年3月頃に3回目の昭和基地への派遣が決まっておられるとのことです。

nann1.jpg以下に、その講義内容(概要)をお知らせいたします。

kiti.jpg1.地球上の水分布割合は?
海洋水約97%、氷河約2%、地下水約07%、その他湖水、河川水、大気、生物という割合になります。
2.南極観測はなぜ行うの?
南極に存在する氷とその大陸の地質、気象等を観測調査することで、過去の地球から現在の地球の在り方(環境)が分かってくるのです。地球温暖化による環境変化の研究の一環として捉えることもできます。
3.氷床とは?
海水から蒸発した水分は南極で雪となって積り、やがてこれが氷となります。氷床とは氷が固まった層のことです。氷床は厚いところでは4,000mにも達し(平均厚さで約2,500m)分厚い氷の塊が南極大陸に覆いかぶさっており、この氷床は大陸の重りのような存在にもなっているのです。
nann2.jpg4.アイス・コア(氷床コア)
この氷床をボーリングして、氷床(アイス・コア)を採取し分析することで何千年、何億年前の地球のあり様が分かってきます。そして、これからの地球の在り方が予見できることになるのです。
現在は3,000m余りの深さのアイス・コアの採取に成功していますので、今後これらコアに閉じ込められた資料から、いろいろなことが分かってくることを期待しています。
5.南極での自然の循環
地球上の水分の97%を占める海水から蒸発する水分は、南極に雪として積り、やがて氷(氷床)となりますが、この氷床はその傾斜や氷床自体の重さによって中央部から沿岸部へ向かってゆっくりと移動し、やがて海へ戻ります。その氷の流れの移動速度は年に数十mから数kmであり、沿岸部に至るとだんだん速度が速くなります。

zu2.jpg6.アイス・ストリーム(氷流)
この氷の流れを「アイス・ストリーム」と呼び、氷床が海へ流れ出す量の90%は、この「氷流」となって流れ出します。その氷流の一つに「白瀬氷河」がありますが、その白瀬氷河の流れの衛星写真が次の写真です。陸地側から海側へ向かう氷流を確認することができます。この氷流は一方で大陸の岩盤と接触して岩盤を削り取るなどの作用をし、また氷流の下にある水の流れによって岩盤が浸食作用なども受けるので、大陸の砂浜海岸や岩盤などの痕跡を調査することで、大陸の変化や海水面などの変化の過程も分かります。

zu3.jpg7.巨大な湖(ボストーク湖)
最近、氷床底部の大陸の一部に(3~4km下に)に大きな湖の存在が明らかになりましたが、今後の調査研究が注目されています。
8.昭和基地
昭和基地、言ってみれば、約40、50人からなる小さな村です。しかし、その村には技術の粋を集めた科学機器や生活のための先端技術が結集しています。その昔は「陸の孤島」的存在でしたが、現在は人工衛星で通信が自由にできるので、世界(日本)の情報はリアルタイムで取得できますから(電話、インターネット)、世界の情報から孤立することはありません。したがって、いわゆる「現代の浦島太郎」のような存在にはならないで済みます。

zu4.jpg9.基地での活動
基地での活動は大きく2つに分けられますが、一つは「観測活動」であり、もう一つは「設営活動」です。
「観測活動」には定常観測(一定の決められた長期継続の観測)、その他モニタリング研究、プロジェクト研究、夏プロジェクト支援などがあります。一方「設営活動」は基地の生活や観測研究活動を側面から維持支援する活動です。47次越冬隊(2005~2007年)の場合は観測系16人、設営系20人の合計36人体制でした。
10.基地の気象(2006年7月の例)
最低気温-35.1℃(2006.7.25)、7月の平均気温-24.1℃、7月のブリザード23個
ブリザードの最大瞬間風速52.2m/s(2006.7.11)
11.湯気が見えない
南極の空気は不純物等が含まれないので、熱いお湯のコップから立ち上がる湯気が見えません。そもそも湯気は熱いお湯から立ち上がる蒸気が空気中にある塵(微粒子)に付着して白い湯気となって見えるので、微粒子(不純物)が含まれない南極の空気では湯気が見えなのです。南極の空気はそれくらい綺麗な空気なのです。
nann3.jpg12.ゴミの持ち帰り
そのような"きれいな南極大陸"の環境を維持するために、基地で出たゴミや廃棄物、汚泥炭化物等は全て日本国内に持ち帰ることが義務付けとなりました。(1999年施行された条約、法律に基づく)なお、施行以前に出された廃棄物等は順次回収されて国内に移送されています。(基地クリーンアップ4か年計画)なお、汚水等は基地内にある「生物発酵処理施設」完全浄化されて、綺麗になった水を海へ戻しています。
13.基地の食事並びに病院
基地での食事は非常に充実したもので、専門のコックさんが腕によりかけた料理は毎食高級(?)レストラン並みの食事です。
病院も完備されており、医師をはじめ専門のスタッフと医療機器が完備されており「温倶留(オングル)中央病院」という大きな看板が病院棟の入り口に掲げられています。

nann4.jpg以上のように、澤柿さんのお話は系統的で理解しやすい内容で、充実した時間を共有させていただきました。ありがとうございました。

なお、本講座は「いしかり市民カレッジ」「市制15周年・こども未来館オープン記念事業委員会」との共催で開講されたもので、砕氷艦「しらせ」石狩新港寄港記念を兼ねて実施されました。また開講は「いしかりサイエンスアイ」グループの協力をいただきました。


 




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