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主催講座12「北海道農業と私たちのくらし」

第2回「メガFTA時代の北海道農業」

2020/11/02

 10月29日(木)、主催講座12「北海道農業と私たちのくらし」の第2回「メガFTA時代の北海道農業」を石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、酪農学園大学名誉教授の中原准一さん、受講者は31名でした。

 中原さんは「みなさん、おはようございます。講座にお集り頂きありがとうございます。今日は主に3つの事柄についてお話しようと思っています。一つは、第二次世界大戦後の世界貿易の仕組みはどう云う形で進められたのか。二つ目は、GATTはどう云う仕組みであったのか。3つ目は、WTOについて、です」と言ってお話を始められました。
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 以下はそのお話の概要です。

1.そもそも国際貿易のルールとはなにか
1)WTO(国際貿易機関)
①概要
・各国が自由にモノ・サービスなどの貿易ができるようにするためのルールを決めたり、分野ごとに交渉や協議を実施する場が設けられている
・意思決定はコンセンサス(全会一致)方式を取り、その決定は加盟国を拘束する
・貿易についての加盟国間の紛争を解決するための紛争解決制度がある(この点が前身のGATTと異なる)
②発足
・前身のGATTを引き継ぎ、1995年1月に発足。本部はスイス・ジュネーブ
・2020年9月現在で、164の国と地域が加盟。日本は1955年にGATTに加盟、現在WTOの主要国のひとつ
③貿易の自由化とは
モノやサービスを他の国から輸入する際にかかる関税や規制等の条件を減らしたり失くしたりすること。
※日本は、一人当たりGDPが先進国38カ国中26位と順位を下げ、韓国に迫られている(※ 日本の国民1人当たりGDPが低下しているのは格差拡大による中間層の没落によるもの)。

2)GATT(関税と貿易に関する一般協定)
①発足
・1947年にGATT(関税と貿易に関する一般協定)が作成され、翌1948年にGATT体制が発足
背景に、1930年代の大不況後、世界経済のブロック化が進み各国が保護主義的貿易政策をとったことが第二次世界大戦を招く一因になったとの認識と反省があった。
②意義
貿易における無差別原則(最恵国待遇、内国民待遇)等の基本ルールを規定したGATTテーマは、多角的貿易体制の基礎を築き、貿易の自由化を促進して世界経済の成長に貢献してきた。日本もまたその恩恵にあずかり発展した。
※最恵国待遇―他国に与えている最も良い待遇と同じ待遇を条約締結国に与えること
※内国民待遇―輸入品に適用される待遇は、国境措置である関税を除き、同種の国内産品に対するものと差別的であってはならない(数量制限などは不可)

3)第二次世界大戦後の戦後復興
・第一次世界大戦後のヴェルサイユ講話条約(敗戦国ドイツに対する過酷な賠償請求)は、ヒトラーの台頭を招き、ドイツ国民に敵愾心を醸成させた、との認識があった
・第二次世界大戦後、大英帝国に代わり米国が世界の覇権国家として登場した
・背景に、東西冷戦(鉄のカーテン/旧ソ連・東欧諸国との対立)があった
・米国主導の国際経済秩序づくりが行われた
IMF(国際通貨基金)、IBRD(国際復興開発銀行=世界銀行)など、ブレトンウッズ体制(連合国の会合が米国のブレトンウッズホテルで行われたことによる)がつくられた。
・ブレトンウッズ体制は、第二次大戦後、敗戦国も含めて、基軸通貨米ドルを中心に各国の為替相場の安定に努めた(固定平価)
※日本(北海道)は、新篠津村の泥炭地開発、別海町のパイロットファーム建設で世界銀行資金を導入。但し根釧パイロットファーム事業で導入されたのは、日本が望むホルスタイン種ではなく、ジャージー種。ジャージー牛は長期間の船積み輸送の後、入植地別海に導入。ジャージー牛は、体力が消耗し伝染病(ブルセラ病)に罹患し入植者を苦しめた。その他にも新幹線敷設など様々な場面で世界銀行の融資を受けた。

4)GATT体制の推移
・GATTの基本原則
関税と課徴金以外の貿易制限措置を撤廃することを原則とした。但し、例外として農業分野などで「数量制限」が認められていた(日本の残存輸入制限品目/コメ、バター、脱脂粉乳、牛肉など12品目)
※世界を見た場合、農業生産構造は一様ではなく国によって大きく異なる。そのためGATTでは、ウルグアイ・ラウンド交渉まで農業分野を一律の関税引き下げを交渉のテーマで取り上げることはなかった。ニュージーランドの酪農は低コスト生産で有名だが、それは蹄耕法による大規模放牧酪農で低コスト生産が可能となる。北海道酪農は、このニュージーランドのような低コスト生産国、EUのような国際市場で競争力をもつ国々との競争にさらされている。
・ケネディ・ラウンド
1960年代の関税引き下げ交渉
・東京ラウンド
1970年代の関税引き下げ交渉。ケネディ・ラウンド同様、鉱工業製品の関税を中心課題とした。また、途上国も加わって合意した。
・ウルグアイ・ラウンド(1986~1994)
新多角的貿易交渉と呼ばれる。交渉テーマは、サービス貿易(物品を伴わない旅行、金融、情報通信など)、知的所有権(特許権、商標権、著作権など)、農産物貿易(関税引き下げ)など。特に農産物貿易交渉は難航した。
・農業交渉について
3つのベクトルがあった。
①ケアンズ・グループ(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、ハンガリーなど)
財政に輸出補助金拠出の余裕がなく自由貿易を志向。
②EU
かっては米国の農産物輸入国であったが、輸出補助金の効果により輸出国に転換し米国と競合するようになった。
③米国
EUへの対抗上、輸出補助金を使い熾烈な市場獲得競争に乗り出す。
・ウルグアイ・ラウンド農業交渉妥結の鍵は、EUのCAP(共通農業政策)改革
EUは、1968年から域内農産物の価格支持・全量買い上げを行う⇒過剰生産を招く⇒過剰生産解消のため輸出補助金輸出⇒米国、ケアンズ・グループと熾烈な市場競争(米国やケアンズ・グループの反撥、EU財政の6~7割を農業補助金に支出、家畜糞尿処理の不備による窒素過剰で、硝酸塩汚染を原因とする酸性雨発生、地下水汚染を招いた)⇒EUのCAP改革。
・EUのCAP改革
①1986~1990年基準で輸出補助金を金額で36%、数量で21%削減する
②「農業保護の消費者負担から納税者負担へ転換」=「生産を抑制し直接所得補償に切り替え」⇒ウルグアイ・ラウンド農業協定の合意事項となった⇒食料輸入国の日本は、不利な立場に置かれるようになった(一例が、関税化を受け入れず数量制限にこだわった結果、ミニマムアクセスで米を70万トン輸入しなければならなくなったこと)

2.WTO(世界貿易機関)の現状
①1995年1月1日発足。2001年、中国加盟
②ドーハ・ラウンド(2001年11月)
ウルグアイ・ラウンド農業協定が輸出国主導で行われたことに途上国や民間NGOが反発。
③カンクン閣僚会合(2003年9月)
合意できず。特に農業分野(特に農業市場アクセス、農業補助金、ミニマムアクセス《最低輸入義務》の3分野)で難航した。
④香港第6回閣僚会合(2005年12月)~インドネシアのバリ第9回閣僚会合(2013年12月)と会合を重ねるが2020年の現在も決着の見通しはたっていない
⑤次期事務総長選挙(※WTOの事務総長は交渉全体の総括責任者で重要な役割を担う)
韓国・愈明希女史とナイジェリア・オコンジョイウェラ女子の一騎打ちだが、世界情勢の様々な事情が反映しており順調に次期事務総長が選出されるか予断を許さない状況だ。
⑥最近の動き
・米国は交渉妥結の熱意を失っている
・個別のFTA(自由貿易協定)の締結が先行
日本は、TPP11、日EU EPA(経済連携協定)、日米FTA(自由貿易協定)など18の国、地域とFTA、EPAを締結している。

3.メガFTA(自由貿易協定)
1)メガFTA時代
①GATT、WTOが標榜した国際協調、相互互恵(無差別の最恵国待遇)の協調路線に代わるメガFTAの時代となってきている
②メガFTAの根幹
・新自由主義(自由貿易と規制緩和が柱)とグローバリゼーション(地球規模の利益追求)による貿易協定
そこで支配するのは、㋑秘密主義㋺関税撤廃㋩科学主義(食の安全への脅威)㋥企業第一主義(ISDS《強力な投資保護のための紛争解決》)㋭知的所有権の強化(遺伝子組み換え食品や新薬、種子法廃止など)㋬「公共」解体(さらなる民営化)など
2)GATT、WTOの停滞
①GATTのウルグアイ・ラウンド農業協定
輸出国主導の合意形成がなされたので、輸出途上国の不満を残した。食糧輸入国日本にとっても不利な結果となった。
②WTOのドーハ・ラウンド
膠着状態となっている。従来の主要国間の合意では交渉を打開できない。むしろ食品関連の多国籍企業(飼料穀物、種子供給、農薬製造、合成化学肥料等々)がFTA(自由貿易協定)などを通じて世界市場の支配を強化しようとしている。
・多国籍企業の支配が進行⇒主要穀物輸出国(米国、ブラジル、アルゼンチンなど)における遺伝子組み換え作物作付け(トウモロコシ、大豆など)の増加
・米国は、多角的ラウンドでのイニシアティブ発揮に消極的(トランプ大統領のアメリカ・ファースト)
・覇権国家を目指す中国は「一帯一路」戦略を取り、米中対立の「新冷戦」時代到来ともいわれる
・二国間、地域諸国間FTA締結が先行(世界中で200を超えるFTAが締結されている。日本は、18件が発効済み、署名済み1件《日英EPA》、交渉中4件、交渉延期または中断3件)

 最後に、前回の受講者のてん菜に関する質問へ答えるお話がありました。
◇てん菜(ビート)
・てん菜は、十勝やオホーツク管内の畑作地帯の主要作物で、十勝では、小麦―馬鈴薯―てん菜―豆類の4品目の輪作体系に組み込まれている
・2018年全道作付け面積は57,209haであるが、生産者の高齢化、経営規模拡大に伴う労働力不足、天候不順、多品目への作付け転換などにより減少傾向

 以上が本日のお話ですが、どちらかと云うと硬い内容であるにもかかわらず、中原さんのユーモアを交えてのわかりやすい説明に受講者は熱心に聴き入っていていました。第二次大戦後にGATTやWTOで進められた国際協調の流れが立ち行かなくなり今はメガFTAの時代となっている状況が大変良く理解できました。
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 最後に受講者から寄せられたコメントをいくつかご紹介します。
「国際貿易と農業についての関係についてよく理解できた。私達の生活への関連も興味深かった。もっと聴きたい話だった」
「農業と政治が密接に関わり合っている事をわかりやすく解説頂き、面白かったです。コロナ対策、ほんとうにありがとうございます」
「とても勉強になりました。本当に何となくニュースを見ているだけの生活でした。生産者の方々にとっては重大な協定であること、など。これからは真剣に耳をかたむけたいと思います。ありがとうございました」
「世界の中で日本の農業はどうあるべきか、どのように生き抜いていけば良いのか、ヒントになる勉強をさせていただきました」
「世界の農業政策で日本の農業政策に多大な影響が有った事がよくわかりました」
「良いお話、大変良かったです。てん菜の資料説明ありがとうございました」
「農村も政治と無関係でないと改めて認識。日本はやはり外交交渉がへただと思った」

 











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