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講座14 『お茶の間目線の経済炉辺談義』

第1回「不安の共振」

2013/01/31

 平成25年1月26日(土)講座14『お茶の間目線の経済炉辺談義』の第1回「不安の共振」を行いました。講師は元銀行マンの辻正一さん、受講者は32名でした。
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 講師の辻さんは、過去2年間「お茶の間目線の経済談義」を話してきたが今回は炉辺で酒を飲みながら話すような気持ちで講座を行いたいと話され、講座が始まりました。まず、前置きの話しとして、新政権の"アベノミクス"に対する各界の反応について述べられました。経済界は、安倍首相の大胆さやスピード感の速さを評価し、景気の回復を期待する"高揚感"さえ感じている。一方、評論家や学者は財政規律が果たして守られるのか危惧している(日銀が国の思い通りに動いていた戦争時のことが思い起こされる)。

 多数のデータや資料、新聞報道およびご自身の豊富な経験をもとに以下のようなお話しをされました。

 これまで随分長い間、ひとびとは「不安の共振」とでも言うべき雰囲気の中でうつむき加減に日々を暮らしてきたが、その不安とは何か?
1.日々の不安
(1) "暮らし"が揺らぐ
・「富」の変化: この20年土地や金融資産の価値が低下し、年金利回りや預貯金利回りも低い。可処分所得が低下し、年収200万円以下の低所得者は今や3分の1を占めている。一方、公的保険料や消費税、電気料などは値上げが見込まれている。
・「格差社会」: 相対的貧困率(等価可処分所得が中央値の半分以下の世帯の割合)は1985年に12.0%であったのが2009年には16.0%まで上昇した。 
・年金不安: AIJ投資顧問による年金消失事件や消えた年金問題の処理、年金未納問題などが解決されておらず、年金への信頼感が喪失している。
・雇用喪失・賃金格差: 失業率は1990年の1.2%から2011年には4.6%に上昇している。ネットワークを使った在宅労働や海外技術者の多数採用など、労働の変質や非正規雇用の増加などの雇用形態の変化が出てきている。
・技術進歩: 一昨年の原子力発電問題など、技術の進歩が不安やリスクを生み出す場合が生じてきている。
・長生きリスク: 高齢者社会の到来で、親の面倒を見ることができない子どもや親の年金を頼りにする子どもが増加している。
・貧困の相続: 学力弱者よりも経済弱者が進学できず、親の学歴が子につながるなど、教育の格差相続が起こっている。
(2) 経済成長への疑念
・デフレの蟻地獄: 低成長経済と福祉財源の不安定化が見られる。例えば、経済成長率は2005年の1.9%から2011年には0.0%へ推移した。中国の成長率鈍化とバブル懸念、米国の財政の壁、欧州のユーロ危機などの海外状況の背景もある。
・福祉原資の持続性への懐疑: 財政の健全性への不安がある。社会保障給付費は確実に増えるが、保険料収入は増えない。福祉の持続のためには経済成長が不可欠である。

2.背景にある経済・社会現象
(1) 企業の栄枯盛衰
・ソニーやパナソニックの長期格付けが投機的水準まで下がるなど、大企業の斜陽が目につく。また、日本企業の産み出してきたものが継続できず、外国企業にシェアーを奪われている。例えば、液晶パネルは1995年に100%のシェアーを持っていたが2005年には8%まで低下した。
(2) 企業には国境が無い
・様々な業種で海外活動が活発になっている。例えば、コマツの2012年度売上(推定)は国内17〜18%、海外83〜82%である。平成24年の新聞報道をいくつか挙げると、「海外M&A、円高で最多、日本企業 今年500件に迫る」、「ピジョン、中国で二桁増収続く」、「ヤマダ、東南ア開拓 ベスト電器買収完了で連携 都市型店、展開急ぐ」、「ベトナム大手銀に出資 三菱UFJ、20%出資の600億円 アジア戦略加速」などがある。
(3) 地域が危ない
・過疎地域が増えて若者が居なくなり、地域インフラの老朽化が問題となっている。例えば、50年以上経過の道路橋梁は2010年度に8%であったが、2020年度には53%に増える。
(4)"蓄え"が消える〜インフレへの懸念
・インフレは通貨価値の低下であり、"モノ"の価値の暴騰および"オカネ"の価値の下落である。政治のポピュリズムが適切な引き締め転換を阻害する恐れもある。
・インフレというものの理解に参考となる文:「政府は大量の紙幣を印刷して巨額の政府支出を調達し続けることにより発生する。見方を変えると、インフレの背景には減価してゆく通貨を保有する国民の犠牲において政府が利益を得る構図がある。つまり国民から政府への『富の強制移転』であり、重い税金を課すのと同じ効果を生むのだ」(猪木武徳「経済学に何が出来るか」より)

 第2部として、不安の背景にある「時代が動いている」状況について話されました。

1.「帰属」の喪失
(1) 家庭・会社・近隣
・高齢者単身家庭は約500万に達し、離婚も増えている。ちなみに、北海道の相対離婚率(離婚件数÷婚姻件数)は全国2位で0.442である。男性の生涯未婚率(50歳時の未婚率)はいまや20%を超えている。会社ではM&Aが一般化し、臨職やパート、派遣が増えている。
(2) 宗教
・母親から子守唄を聞いて育つのではなくテレビの歌を聞いて育つ、果たして良いのか?
(3) 権威の崩壊
・決められない政治やマニフェスト不履行などに対する政治不信、民意を正しく反映していない政権(米ではオバマ:ロムニーの投票率が51%:48%であるのに対し選挙人獲得数は332人:206人となった。日本でも、自民:民主の得票率が65.3:34.7(小選挙区)と63.3:36.7(比例代表)であるのに対し、当選者の比率は83.8:16.2となった)およびねじれ現象などがある。学校教育でも「聖職」の否定や「マンモスペアレンツ」などが目立つ。

2.政策の迷路
(1) 経済成長と財政基盤
・下図のようなサイクルがあり、世界先進国全てが経済成長先行論と財政健全化重視論の葛藤に当面している。これらは資本主義市場経済が共通して当面している基本的問題である。
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(2) 新政権の選択
・アベノミクスの基本的な考え方は「金融緩和」、「財政出動」、「成長戦略」の3本柱である。これらを受けて市場での株価は現在1万円を超えている。一方、実体経済活性化のための具体策やTPP参加問題、エネルギー戦略・原発問題、福島復興を含む国家建設の哲学(日本人の覚悟)などの基本的課題は先延ばしされている。

 今まさしくタイムリーな経済問題について、難しいことも含めてわかりやすく解説していただきました。大変勉強になった90分でした。




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