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主催講座2 石狩川治水の歴史 第2回石狩川治水について

2023/05/27


 令和5年5月11日(木)講座2『石狩川治水の歴史』の第2回「石狩川治水について」を石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。今回の講師は前半が石狩川振興財団特別参事の高橋季承さん、後半が国土交通省北海道開発局札幌開発建設部札幌河川事務所副所長の大谷英樹さんで、受講者は41名でした。
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 高橋さんは講座に先立ち、北海道や石狩市の印象について話されました。北海道は農産物の生産がカロリーベースで全国の約4分の1を占め、食料自給率は200%(全国は37〜38%程度)を上回り、お米が美味しいことや全国の銘菓の原料は北海道が供給していることなど、北海道の良さを強調されました。石狩市についても再生エネルギーの供給基地として今後有望であることなどについて話され、本題の「石狩川治水の歴史」の話に入られました。以下にその概要を示します。
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1.  石狩川治水の歴史
1−1 石狩川の概要
・石狩川の長さは268kmで信濃川、利根川に次いで全国3位、水源は石狩岳(上川町)で河口は石狩湾(石狩市)、流域面積は14,330(利根川に次いで全国2位)、流域内の人口は約312万人で全道の約6割を占めている。
・明治2年に開拓使が設置されて「北加伊道」(北海道)と命名され、士族移民や屯田兵あるいは民間移民などによって開拓が進められた。石狩川は原始のままであったが内陸に向かう船運航路として重要であった。
1−2 開拓民を苦しめた度重なる洪水
・石狩川で度々発生する洪水は北海道開拓の妨げとなった。
・明治12年から明治42年までの31年間の記録で見ると以下のようになる。
  融雪出水で石狩川が氾濫した回数:28回
  明治12年4月の洪水での最高水位:26尺(約7.9m)、氾濫日数:34日
  大雨によって氾濫した回数:4回
  明治31年9月の洪水での最高水位:27尺2寸(約8.2m)、浸水面積:15万町歩 (約1,500
・明治31年9月に大洪水が発生し、石狩平野は幅約40km、延長約100kmが泥海となった。被害家屋は18,600戸、死者は112名、開通したばかりの橋や鉄道、運河などが壊滅的な被害を受けた。以下はその時の砂川市の写真です。
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          図1 砂川市の被害状況(川の博物館より)

1−3 石狩川の治水工事
・明治31年9月の洪水の後、明治31年10月に北海道治水調査会が設置され、翌年から岡崎文吉が中心となって10ヵ年計画で本格的な調査を開始した。
・明治37年7月に台風による大洪水が発生したが、岡崎は溢れ出た水量が堤防の中に収まった場合にどれくらいの水量になるかを計算し、流量が30立方尺(8,350m3/秒)と算定、これを基に治水工事を計画した。
・明治42年に「石狩川治水計画調査報文」を提出、明治43年に石狩川の本格的な治水事業に着手した。
・捷水路の工事は最下流の生振捷水路から始まり、昭和44年の砂川捷水路まで29ヶ所で行われ、石狩川は約60km(自然短絡を含めると約100km)短くなった。捷水路によって年平均水位は低下し、利用可能な土地が増え、北海道開拓に大きく貢献した。
・昭和37年の洪水時には堤防が連続しておらず、堤防の無い地区で大規模な外水氾濫が発生した。そのため、連続した堤防の建設に重点を置くことになった。
・昭和50年の洪水時には堤防が連続していたものの、堤防の高さがまだ十分でなく、堤防を越水し破堤することによる氾濫が多く発生したため、+0.5mの暫定的な堤防の建設を急ぐこととなった。
・昭和56年8月には戦後最大の記録的な豪雨によって14ヶ所が決壊し、甚大な被害が生じた。流域の平均雨量は284㎜(観測史上最大)、浸水面積は614、浸水戸数は22,500戸であった。
・昭和56年8月の洪水時には茨戸川周辺の浸水被害を抑えるために、まだ建設中であった石狩放水路を緊急的に通水し、増水して溜まった川の水を直接日本海に放流した。写真で、上側に放水路のゲートがあり、そのさらに上流側が茨戸川、下が日本海(石狩湾)である。
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    図2 石狩放水路の緊急通水(北海道開発局資料より)

・昭和56年洪水後には、河道の流下能力を拡大するための工事や泥炭等の軟弱地盤に対応した丘陵堤の整備、遊水地や多目的ダムの整備など、総合的に治水対策を進めている。
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      図3 石狩川における丘陵堤の整備
         (札幌開発建設部資料より)

・伏龍川流域は低い平地が広がり、石狩川本川の背水(バックウォーター)の影響を大きく受ける。一方、札幌市北部地域は札幌市の人口増加に伴って都市化が急激に進み、洪水による被害を受けやすくなった。そのため、洪水時には伏龍川流域を石狩川から遮断し、洪水の水を直接日本海に放流するための石狩放水路を昭和47年に着手し、昭和57年に完成させた(上述した昭和56年は完成前であったが、洪水のため緊急に放水路を開けた)。
・気候変動による地球温暖化が進むと大雨災害が増えると予測されている。シミュレーションでは北海道が最も大きく影響を受ける可能性があり、今後はこのようなことを踏まえて治水対策を進めて行く必要があるとともに、流域のあらゆる主体が協働して流域全体で対応する「流域治水」を進めていくことが大切である。

2. 石狩川治水について〜石狩川治水の歴史・現状・これから〜
 後半部を担当された大谷さんは石狩南線小学校で学び、中学・高校時代を石狩市で過ごされました。今回の講座は何らかの縁を感じると話され、講座に入られまし。以下にお話の概要を示します。
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2−1 豊平川(3川合流)の概要と主な洪水被害
・豊平川の流域面積は石狩川流域面積の約1/16であるが、流域内人口の約1/3が豊平川流域に集中している。流域面積は902.4k、幹川流路延長は7.5km、流域内人口は約151.7万人、想定氾濫区域面積は247k、想定氾濫区域内人口は約104万人、関係市町村は札幌市、江別市、北広島市、石狩市、当別町の4市1町である。
・札幌市中心部を貫流する豊平川は、橋梁や地下鉄など河川を横断する施設が多く、堤防上の道路は都市交通網として重要な役割を果たしている。
・昭和56年8月下旬の洪水では勾配が急な河川である豊平川は、高速かつ激しい流れで三角波が発生し、洪水後は激しい河岸浸食が観察された。
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              図4 急流区間の洪水時〜三角波の発生

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                図5 3川合流の水害(昭和56年8月)

2ー2 ハード的な治水対策
・どのような治水対策がされているか、一般的な方法を模式図で示した。堤防や遊水地、排水機場(ポンプによって浸水した流水を河岸あるいは堤防を横断して排水する施設)などが一般的である。
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       図6 河川の主な管理施設

・ダムも洪水を調節するための施設として重要で、下図にあるように今まで幾つものダムが建設されてきた。
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  図7 洪水調節施設(ダム、遊水地)の整備状況

・石狩川下流は泥炭性の軟弱地盤が広く分布しており、堤防沈下のたびに盛土を繰り返してきた(下図)。
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       図8 軟弱地盤地帯の堤防

・洪水を安全に流下させるために河道のしゅんせつを行った。平成13年9月の洪水では、しゅんせつによって石狩大橋地点の水位が約1m低減する効果があった。
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       図9 しゅんせつの効果

・上述したが、石狩放水路は洪水で増水した時に効果的であった。令和4年8月に降雨によって石狩川の水位が上昇したが、放水路を使って茨戸川の水を日本海に放流して水位を約0.6m下げ、約320haの浸水被害を防止できたと考えている。
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      図10 令和4年8月出水の概要

2ー3 ソフト的な治水対策
<動画>豊平川が決壊した時どのようになるかをシミュレーションした10数分間の動画が流された。以下は動画の概要です。
・地球温暖化による気候変動で台風は30年前に比べて1.9倍増え、全国の河川で多くの被害が生じた。平成21年には利根川が決壊して広範囲に浸水被害が起こった。平成28年8月には北海道で歴史上初めて三つの台風が到来し、記録的な大雨が降って全道が甚大な被害を受けた。
・札幌市にある豊平川は過去何度も氾濫し、大きな被害を受けた。昭和56年8月洪水と同等規模の災害が起こり、72時間で406㎜の豪雨が降って豊平川が決壊したとの状況を想定し、シミュレーションによって動画を作成した。また、合流点から上流17kmの所で堤防が決壊して市街地が浸水したと想定して作成した。
・それによれば、100分後に創成トンネルの水位が30cmの高さとなり、車のドアが開け難くなった。120分後には薄野交差点まで水が到達、200分後には札幌駅前の水位が50cmとなり地下まで浸水、12時間後には浸水は地下鉄麻生駅付近にまで到達、20時間後には茨戸付近まで到達した。
・開発局では、護岸や河川の樹木伐採などのハード的な対策を行う一方、ハザードマップの公表や洪水時の浸水程度や避難場所を提示するなど、ソフト面の対策にも力を入れている。
2ー4 茨戸川浄化対策
・昭和40年代頃から周辺都市域の人口増加などによって生活排水や下水処理水などが増加した。茨戸川は水が停滞することが多く、水質汚濁が進行した。
・さまざまな対策を行った。例えば、茨戸川に創成川、石狩川本川および創成川の3川から水を導入して浄化を行った。
2ー5 流域治水の推進〜これからは流域のみんなで〜
・気候変動の影響による水災害の激甚化・頻発化等を踏まえ、河川管理者は堤防の整備やダムの建設などのハード的な対策を進めているが、それだけでは対応できないことが多い。そこで、流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行うことが必要です。例えば、リスクの高い場所には住まないようにするとか、みんながそれぞれ出来ることをやって行くというのが流域治水です。

 時間の関係上2−4や2−5は簡単な説明に終わったが、最後に動画の想定条件などについて質問があり、それに答えて講座は終了しました。

 最後に、受講者の感想や意見のいくつかを以下に紹介します。
「江別・石狩の昔の水運に興味があり、聴講しています。今回も岡崎文吉の業績の内容があり、自然との戦いが伝わり、良かったです。ありがとうございました」
「高橋様、大谷様、両名のお話しは図や写真、動画を使ってわかりやすく、興味深かったです。とてもわかりやすくて、大変良かったです」
「豊平川の堤防決壊のシミュレーションを見せていただいたのはよかった。洪水対策は一人一人が考えなければいけないと思い、ハザードマップを見ておくことも大切とわかりました」
「前半〜短時間ながらコンパクトにまとめられた豊富な資料、解説だったと思います(資料が小さく、又説明が淡々と静かな語り口だったかな...とも)。貴重なお話しを聞けて大変良かったです。後半〜河川管理の総元締である事務所の立場からのお話しは、石狩川と共に暮らして来た者にとっては特に興味深く、有意義でした」
「内容は豊富ですが、説明図やパワーポイントの図が小さすぎてお話についていけなかった。スライドの図は1ページに4枚くらいが、よいのでは?内容が盛りだくさんなので2回に分けてお話を聞ければよかった。特に石狩川下流のプロジェクトの説明が欲しかった」
「日頃茨戸川の"不思議"をどう解決していけるか考えていたところに、今回のテーマは実に興味深いもので、少しかは理解が深まりました。ありがとうございました。本日の講師、現役(並み)の判りやすい資料添付でのもの...、よかったです」
「札幌河川事務所の講座は、動画等もあり、解りやすかった。茨戸川の治水施設の概要(運河水門、放水路水門、排水機等)が理解できた。導水事業で茨戸川の水質改善が図られていることが新しい発見」




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