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主催講座1「流通最前線の今を知る~最近の食品の消費・流通動向と企業戦略~」

第1回「食品流通業の現状と課題」

2021/05/10

 本年度初めての主催講座を4月22日(木)に石狩市花川北コミュニティセンターで行いました。受講者は、45名。講座1のテーマは「食品流通の最前線の今を知る」。現地見学を含め3回シリーズで生活に直結する食品流通について学ぶものです。
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 第1回目は業界の動向に精通した阿部整治コンサルタントを講師に招き「食品流通の現状と課題」について
①デジタル化が進行するなか生活者の買い物の仕方の大きな変化にどのように対応していくか
②生活者から見た食のトレンドがどう変わってきたのか
③最後にコープさっぽろを例に売場から見て食の変化がどのようになっているか
などの視点から概括的なお話を頂きました。
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講師・阿部整治コンサルタントの略歴
*1949年 札幌市生まれ(71歳) 
*1971年 札幌地区大学生協連合会 入協 
*1975年 北海学園大学生協 専務理事 
*1982年 コープさっぽろに移籍、店長・地区本部長・惣菜部長歴任 
*2009年 定年退職・個人事業開業(教育コンサルタント)・現在に至る
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以下はその講演内容の要旨です。
 
世の中の大きな変化                
・デジタル化が重要ポイント
 21世紀における3つの大きな変化として
①グローバル化企業の価値連鎖
②デジタル化による情報技術革新の進行
③世界中がネットでつながるソーシャル化
が挙げられるが、とくにデジタル化を特に強調したい。
 とくに2010年代からの第4次産業革命でコンピューターによる機械等の自動化が進み、この動きに対応できない企業が淘汰される時代になった。
 GAFA(米国の主要IT企業グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾンの頭文字の略称)のような巨大企業が世界を席巻していくなかで、日本は「失われた平成の30年」によってデジタル化に後れを取った。 
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・デジタル化の食品流通業への転用
 こうした第4次産業革命のデジタル化の技術がどのように食品流通業に転用されていくかを見たのが別表である。
 こうした技術の進歩により食品流通業の陳列・発注・在庫管理等の多くの業務がさらに大きく変化していくものとみられる。
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◇食品流通業のここ20年の動き   
・業態間競争の激化
 ここ20年、食品流通業の動きを見るとスーパー・コンビニ・ドラッグ・通販業態は伸びてきたが、百貨店は苦戦続きであった。業態間競争が激化しており傾向としては大きな店から小さな店へとシフトしてきている。
 コロナ禍に見舞われた昨年の売り上げを見るとコンビニは苦戦し初めて売り上げが前年を下回ったのに対してスーパーとドラッグストアーは売り上げが上昇した。自粛で在宅時間が多かったためホームセンター・家電量販店も良かった。総じて食品関係は追い風が吹いて順調だったと言える。スーパーマーケットの好業績、アマゾンなどネットスーパーとの使い分けや、コンビニ・ドラッグ・ネットスーパーとのシェアー争いが激化している。
・コロナ禍における環境変化
 コロナ禍のなか世の企業は、株主第一主義・利益至上主義からSDGs(持続可能な開発目標)を中心とした取り組みをしなければ顧客支持が得られなくなってきた。コロナ禍でマスク生産は中国依存が露呈するなど我が国の安全保障の観点からグローバル・サプライチェーンの再構築も必要になってきた。また、中央集権型から地方分散型ネットワークの時代へ進むものとみられる。
 このコロナ禍によりもっと先と思われていたオンライン会議等のデジタル化が一気に進んだ。

◇生活者から見た食のトレンドの変化
・モノからコト、トキ消費へ
 生活者の価値観も変化しモノ消費からコト消費、そして最近では参加することに豊かさや価値に置いたトキ消費へと志向が移ってきた。コープさっぽろではマグロ解体ショーなどの人気が高い。過去から続いてきた家族のモデルがなくなり家族の形にも変化がみられる。  
 高齢者の生き方も「社会の一員でありたい」「親も子も一個人」「楽しみは身近なところに」というような特徴も見られる。こうした家族や子供そして高齢者の変化に対応したマーケティングが求められている。
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・コロナ禍で「おうち消費」が伸びる
 従来までは外食・中食・内食という食事形態の概念が独立して存在していたが、コロナ禍での自粛生活が続くなかで「おうち」時間の消費シーンが中心となり各々の垣根がなくなったという分析もある。こうした変化にどうプロモーションをかけていくかも必要になっている。
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・短時間で効率的に安心して買い物が
 流通小売業のコロナ禍対応としては、短時間で効率的に安心して買い物ができる仕組みづくりや日持ちのする商品やヨーグルトや納豆などの「効用」のアピールによる健康や免疫力向上に関連した商品提案も増えた。エッセンシャルワーカー支援などの取り組みも広がった。
・進む「生鮮の惣菜化」
 今、トレンドが変わってきておりスーパーマーケットでは「生鮮の惣菜化」が進んでいる。肉とか野菜・魚など単なる素材を販売するのではなくすぐ食べられる調理済商品づくりが進んでいる。最近ではレンジでチンだけといった商品が売れている。日本ハムのシャウエッセンでもレンジでチンをする商品が出てくるまでになった。
・コロナ禍で進む「5つのレス」
 コロナ禍で食品流通業の「5つのレス」が進み定着していくとみている。非接触型のタッチレス、現金不要のキャッシュレス、チラシなどを減らすペーパーレスなどである。キャッシュレスに慣れた子供は「お釣り」という概念が分からないケースも見られる。

◇環境の変化への企業対応
 こうした様々な環境の変化に企業としてどのような経営戦略をとっていくかについて話をしたい。
 サバイバル戦略として挙げられるのは売り上げがゼロでもかかる固定費・コストの「変動費化」だ。人員の適正化(ダウンサイジング)である。コープさっぽろでは店舗ではなく本部の3割人員削減に取り組み、本部職員の机の数を減ら共用することを始めた。いろいろな企業でリモート会議を標準化する取り組みもある。
・食品流通業の大きな課題
 食品流通業の今後に向けた課題について私なりの考え方を話したい。一つ目はSDGs※の推進であり企業として提供する社会的価値を明確にすることである。
二つ目はDX※への取り組みである。今後の業績格差はこのDXの差になると考える。三つ目は損益計算書ではなくキャッシュフローのマネジメントを重視した経営体質の強化である。厳しい経営環境下、必要なのは組織としての厳しい時代におけるミッション※の共有化である。
※SDGs「持続可能な開発目標」
簡単に言うと「世界中にある環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を、世界のみんなで2030年までに解決していこう」という計画・目標のこと。
※DX(デジタルトランスフォーメーション)  
進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のこと。
※ミッション
なぜその事業をしているのか。誰にどのような価値提供をしたいのか。という問いに対する答えがミッション。 
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・女性視点のマーケティングも
 世帯消費の8割は女性が決めており9割に口を出している女性視点のマーケティングの推進である。この女性を意識した販売促進が求められる。
 女性視点のマーケティングに組み込むべき「6つの共」のうち特に女性の声に耳を傾ける「共感」が大事で、共感を得るためにどうするかが重要である。
・食品流通業におけるDX
 次に食品流通業におけるDXの進行をみるとサブスクリプション(「料金を支払うことで、製品やサービスを一定期間利用することができる」形式のビジネスモデルのこと)シェアリングエコノミー(インターネットを通じて、モノや場所、スキルや時間などを共有する経済の形)。そしてリテールテック小売りリテールは、事業にITやIoTの最新デジタル技術を導入すること)があり商売の仕方が変わっていく。
 マゾンなどは「収入源」と「決裁」と「物流」の段階での変革を成し遂げ大きな変革の波を起こした。
 流通各社も共通してこのDXにしっかり取り組むという姿勢を示している。ところが我が国のDX競争への対応力は63か国中23位で立ち遅れている。世の中が大きく変わっているのに過去の成功体験に縛られ硬直化した組織・人事等が影響し思い切って変えられないことが要因であり、この克服が課題である。
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・人工知能などAIの活用             
 心配されるのは人工知能などAIでどれだけ仕事が奪われるかだが、AIで出来ること出来ないことがある。ホスピタリティやリーダーシップ・クリエイティブな仕事は人間に残る。若い人たちなどには将来的にはこういう分野で知識や技術を磨いていくことを勧めたい。
 物の購入にあたっては、「訪問」して「商品を選択」し、「決済」を行ったうえで「消費」するという流れになるが、これが面倒だという顧客が多くなるとみられる。ITの導入によって段階的にかつスピードをもってこれらのニーズに対応していける店になっていかねば支持されなくなっていくだろう。
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・食品流通業のITの取り組み
 食品流通業のITへの取り組みを見るとセルフレジの導入、買い物かごにバーコードを読み取る機能をセットし商品を入れる際にスキャンすることでレジに並ばずスマホで支払いができるシステムさらにはテックと呼ばれる監視カメラで管理された無人店舗での自動決済システムなども開発されている。
 紙のレシートを無くし電子化しスマホで見えるようにしたり、顧客情報を管理し売場に立った際にスマホを通じて顧客に商品提案できるシステムなども開発されている。
ユニクロではICタグをすべての商品につけて在庫管理・発注・レジ決済まで自動化する実験の動きも出ている。ICタグの価格が1個5円から2円になることが決まっており、この先この価格が低下することでスマホの機能の向上と併せ大きな変化を生むとみられる。
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・生活者からみた食のトレンド
 生活者からみた食のトレンドに話を移す。
 この30年、情報化が進んだ。料理情報もクックパッドのウエイトが高くなりここから生まれ定番化する料理も多い。今や口コミとSNSが重要でありここのマーケティングが不可欠となっている。
 肉の分野では鶏のから揚げは家庭料理として定着した。
 スイーツ・パンなどの分野では美味しいものを食べたいというニーズの中で高級食パンの人気が高い。
 コロナ禍でオーブンを使って焼く料理が拡がっている。時短ブームに乗って短時間で調理できるレシピに人気がある。
 食品ロスの問題も浮上している。
・スーパーマーケットにおける食の変化
 最後にスーパーマーケットにおける食の変化を見てみたい。
 果物は外国産のウエイトが高まっている。販売する果物の品目数は減っているが単価の上昇で売り上げを確保している。
 野菜は、良く売れるトマトの料理提案が求められる。
 畜産の分野では道内は相変わらず原料売りが多い。本州方面ではトンカツ用とか料理の名前で売っている。
 水産では、相変わらず和食料理であるが洋食提案も必要。養殖魚が多く、今や魚を卸すという考え方はなくなっている。
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◇最後に
 ユニクロの柳井社長は、これまでの常識が通用しない時代にあって自分たちがまず変わらなければならないと言っている。クラーク博士の「少年よ大志を抱け!」にある「こころざし」(心と指し)は人としてのあるべき道の方向を示唆する理念が含まれている。一人一人に志とは何かが問われている時代といえる。

コストコのこと
 講演後、石狩市にオープンした「コストコ」についての質問があり、グローバル社会にあって日本に進出してくる企業の中で唯一成功しているのがコストコである。売り場を見るとアメリカにいるようで日本ではない。モノからコトに変わる消費者ニーズに合っている。なんでも売っているわけではないが圧倒的に安い。モノを安く売るには物を作り配送などに至る分野まで対応することが必要でそこが強みでもある。など感想が述べられた。

終わりに、受講者のコメントをいくつかご紹介します。
「何となく持っていた私の知識がきちんと体系づけられて教えて頂き、改めて再認識でき、大変勉強になりました。ありがとうございました」
「流通の現在を知ることは、今まさに動いている、生活している社会そのものであることを実感する迫力のあるお話を聴くことが出来ました。豊富な資料、生活に密着した日常の暮らしを解説してくれたお話。分かりやすく現実に即した内容で良かったです。面白かったです」
「食品の消費・流通の変化、コロナ禍での世の中の変化等、流通の専門家コンサルタントの阿部整治講師の詳しい資料と分かりやすい説明で、素晴らしい学びを受講できました。ありがとうございました。良かったですよ」
 
 




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