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講座6 「文明開化(西欧化)の名のもとで日本人は何を失ったか」

第1回 「文明開化によって起きた現象について」

2015/07/19

 7月14日(火)、講座6「文明開化(西欧化)の名のもとで日本人は何を失ったか」の第1回「文明開化によって起きた現象について」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、北海道、北方地域のアイヌ、日本、ロシアに関する研究をされている北海道教育大学札幌校教授の百瀬 響さん、受講者は46人でした。

 「ご紹介頂きました百瀬です。今日は文明開化のお話をしますが、私は、中学校の頃、教科書の絵にすごく疑問を覚えました。それは、文明開化の頃、教師が子どもに強要してお地蔵さんを砕いて敷きつめた所へオシッコをかけさせ、それで新しい価値を教えたと説明してあったのです。そんなことってあるでしょうか?昨日まで手を合わせて拝んでいた物に今日になってそんなことができるでしょうか。もうひとつは、北海道で起きたアイヌ文化の改変です。これまでの陋習は洗除しなければならないとされました。しかし、調べてみると、陋習を洗除すると云う言葉は日本全国で使われたのです。私は、日本の風俗がどのように変わっていったのか、を調べてきました。今日は文明開化とはどんな現象だったのか、をお話したいと思います」
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 以下は本日のお話の概要です。

1.「文化の保存」観の相違
・アメリカ合衆国議会図書館での調査の時の経験―GHQによる資料収集は、驚くほど徹底的なものであらゆる資料が集められていた。
・スミソニアン博物館(フリーア美術館)に飾られていたあ・うん像は、廃仏毀釈によりお寺の裏に捨てられていたものだった。このことからも、すさまじい文明開化の状況が窺える。
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2.文明開化の定義
・目的:西洋諸国との間の不平等条約撤廃をするためには同じ文化レベルにならなければいけない。
・時期:明治10年代後半頃までで、その後は政策転換
・内容
①政府主導の政策―啓蒙的文化・教育政策
②当時の文化状況
啓蒙思想・文明論、世相・風俗を表す流行語、新奇な生活文化など庶民の側にも受け入れる下地があった。
このように上(政府)からと下(庶民)からの両方向から起こった社会現象・文化現象が文明開化である。

3.西洋化=近代化
・非西洋の近代化
西洋と日本(東洋)との近代化の過程は違う。日本(東洋)の近代化は「文化伝播による自文化のつくりかえの過程」であり(富永 1990)、近代化の指標には4つの領域(経済、政治、社会、文化)がある。
そのうちのひとつ、文化は普通なかなか変われない。日本の文化が改変する過程で、何が早かったのか、何が遅かったのかを研究すれば、日本文化の本質が見えてくる。本日は、比較的分かりやすい風俗について見ていきたい。
4.風俗の改変
西洋道中膝栗毛の挿絵
羽織袴でわらじ履きの武士を未開の人、つば広帽をかぶりカフラーを巻いて靴を履いた人を半開の人、洋装でシルクハット、洋犬を連れた人を開化の人としていて、当時の人達の考え方が窺える。
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違式詿違条令(いしきかいいじょうれい)
・三府(東京、大阪、京都)と五港(函館、横浜、新潟、神戸、長崎)での優先的施行が予定された。これらの地は外国人の目に触れやすい所で、外国人の目に触れては恥ずかしい慣習を取り締まる条令であった。
・禁止内容(外国人から批判される反文明的≪野蛮≫な習俗)
屋外での大小便、裸体、人糞肥料、混浴など
これは、まわりの目を気にする日本人の特性からきている面もあるのではないか。
・日本人による自己規制もあった(見苦しい物をなくす)
男装、女装、入れ墨など
・改変の一例
古来禁断の春日山の鹿を狩る(新聞雑誌)、古物旧物を保存尊重せよ(太政官日誌)など
5.外国人のまなざし
・ペリー来航時
日本人は、電信と汽車に無邪気で子どもらしい喜びを示したと書かれている。
下田の公衆浴場で「裸体をも頓着せず男女混浴」している光景を紹介して「日本の下層民は道義が優れているのに、淫蕩な人民だ」と断じている。
・肯定的興味
E.ケンベル「日本誌」、シーボルト「日本」など
日本人の勤勉さ、穏健さへの評価。美術・工芸品への評価(ジャポニズム)
・否定的興味
野蛮な風俗(往来での裸体、混浴)
・もう一歩踏み込んだ日本人観
H.P.デュル「裸体とはじらいの文化史」
日本が今世紀になっても羞恥心もなく裸体になった、と云う批判に対して、「彼らは自分の隣で入浴する者の裸を《見る》ことはなかった」「《見れ》ども心に留めずなのである」と解説した。「日本人の裸体に対する無邪気さ」と云う神話は、「植民地主義者」によって主張されたものだ、としたが、一方で日本人も「異国人に対して伝統的な日本のエチケットを説明しようとしなかったことが結果として外国人に日本人が野蛮人であることを確証させることとなった」「日本人は自国のエチケットを説明する代わりに自国の近代的《西洋的》立法を示した」と言っている。
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 以上が本日のお話ですが、百瀬さんは最後に
「文明開化が、もし失敗とするなら、それは自分たちの文化の改変の仕方であったと、私は思っています。なぜ、自国の文化を外国人にきちんと説明しようとしなかったのか。しなかったと云うより、説明すると云う事に、思い至らなかったのかもしれません。すべてを西洋流にしなければと云うひとつの選択肢しか見いだせなかった、これが文明開化の特徴のひとつだと思います」と結ばれました。

 こうして本日のお話は終了しましたが、日本人の特質について大変示唆に富むものでした。自分たちの事を他者にきちんと説明しようとしない傾向は現在でも続いているように思えます。次会のお話が楽しみです。



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