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「お茶の間目線の経済炉辺談義」

「いしかりに」思う

2013/03/29

3月9日(土)北コミセンにおいて講座14『お茶の間目線の経済炉辺談義』の第3回『"いしかり"に思う』~イノベーション~の講座が行われました。受講生は24名でした。講師は前回と同じ、元銀行マンの辻 正一さんです。
辻さんは、最初に先日慶大教授で産業競争力会議のメンバーでもある、竹中平蔵先生の講演会があったので、聴きたいこともあり参加した感想からお話を始められました。
講座15金融 001.jpgダボス会議でのアベノミックスによる円安に対する各国の反応については結論的にはあまり批判を受けないですんだ。円安にはドイツが批判的であったが、EUにおける経済的に唯一の勝ち組であるドイツの批判意見に対しては他の国の反応が薄かった事などを話されていました。
また関心を持っていた新聞報道で産業競争力会議での官僚が民間選出委員間の意見相違を利用しようとする動きについては、講演では触れなかったこと。そして成長戦略の中で農業改革が抜けた問題など話されました。

 順調に発進している安陪内閣の正念場は「7月の参議院選挙」と「成長戦略を軌道に乗せる」であるといえる。
今回は成長戦略と関連して今後、頻度高く今後表れるであろうキーワード「イノベーション」について概観し、"いしかり"のイノベーション(成長戦略)を考えてみたいと話されました。

Ⅰ  ひとびとの営み

安陪新政権の政策として
1「3本の矢」
    ※大胆な金融緩和
    ※機動的な財政出動
    ※民間投資を喚起する成長戦略

・経済再生推進体制 hyou.bmp       

●この組織図によると産業競争会議と規制改革会議は規制改革という意味では2本立てになってる。
経済再生には産業競争力会議も規制改革が優先するとされ今後規制改革会議とのすり合わせが注目される。

2「イノベーション」
①イノベーションの理論
「経済発展理論」の中でイノベーションという言葉を経済学的に初めて使った経済学者がシュンペーターである。
論文の中でこれからの経済を発展させるのはイノベーションであるといっている。「経済発展理論」の中で次のようなことを言っている。
※5つの新結合
 ・新しい製品或いは品質の生産  価値を生む製品、品質
 ・新しい生産方式の導入     価値を生む生産方式
 ・新しい市場の開拓       市場の開拓
   ・新しい資源供給源の獲得    資源、人材、情報
   ・新しい組織の実現       仕組み創設

※創造的破壊
・資本主義経済は、その本質として、企業が5つの新結合を実現する事により旧い産業や生産体制を破壊する。このことが経済発展の原動力である。このことに過剰に政府が介入する事は好ましくない。
またシュンペーターは不景気は経済の踊り場であり、必要な事であるともいっている。

※「イノベーションのジレンマ」についてクレイトン・クリステンセンの著書から説明され
■持続的イノベーション=従来の改善、改良―合理化を生み、既存技能を持つものは職を失う。

破壊的イノベーション=従来の破壊―シュンペーターの考え方

■持続的イノベーションの限界
○既存優良企業は有力であるがゆえに持続的イノベーションで自社経営を持続し、破壊的イノベーションを軽視する。
○持続的イノベーションの成果がある段階で顧客ニーズを超えてしまう。
○顧客は、他社の破壊的イノベーションに目を剥き始め、それが力を持ち始める。
○優良企業はその地位を失う。

②イノベーションの土壌
辻さんの私見としてイノベーションを推進させる土壌について次のことに触れた。
・創造性の構造 ― 異質なものとの統合が必要 
A・B⇒C、C≠A C≠B (A+B)=<C (新しいもの)
・創造活動の要件 ― 柔軟さ+流暢さ+寛容さ+緻密さ
・同質化社会の脆弱性―共同規範の確立→異質の排除→同質集団化→組織としての葛藤がなくなる→新しいものが生まれない→外部の変化に内部の変化がついていけない→社会の衰退

③イノベーションのリスク
・持続的イノベーションの雇用に与える影響
合理化(リストラ)が起こり従来の技能を必要としなくなり失業を生む
・官製イノベーション
抜本的改革は本来、官庁や役人には苦手である
・規制改革       =権限の放棄
・創造性        =前例の尊重、ルール重視、同質化集団
・新陳代謝の円滑化・促進 = 既得権益の喪失
・異分野連携       =省庁縦割り

 ④シュンペーターの言う「企業家」「銀行家」
※企業家の精神として
・豪華な邸宅は目的ではなくそれは結果である。
・自己の王朝を建設しようとする夢想と意思がエネルギーになる
・成功を獲得しようとする意欲
・創造の喜び

※銀行家の役割
新結合の遂行を可能にし、いわば国民経済の名において新結合を遂行する全権能を与えるのである。=新結合の監督者
しかし現実は銀行にシューペンターの言う銀行家の能力が備わっているか、今後の課題である。

(2)"いしかり"経済イノベーションの資源
辻さんは、思いつくまま"いしかり"経済イノベーション・キーワードとして
シュンペーターの5つの新結合の要素にそって話されました
 ●新しい製品、品質の生産
石狩湾新港
立地企業集積
エネルギーバリューチェーン
 ●新しい生産方式の導入
裏日本港湾の連携
札幌連携
小樽連携
超電導実験
 ●新しい市場開拓
大消費地札幌
アジア進出
安全バックアップ機能
新港立地企業、勤務者

 ●新しい資金供給源
森林資源
地場農水産品
札幌の知財集積
 ●新しい組織の実現
商社機能
新興企業と新旧市街地企業連携
人材育成
新しい公共空間の創出
市役所イノベーション
などを上げられました。

3"いしかり"の経済発展に思う
~参加されている方々からの発言~
ここで参加されている方々から今日のテーマに限らず発言をお願いしたい話され、発言を求められました。3名ほど発言されました
①創造的破壊についての感想を述べられ、大学の研究室での化学実験等で、経験の全く無い生徒がセオリーから外れた実験行為を行うことがあるが、それがとんでもない新しい発見につながることがある。新しい発見に繋げるためには新しい発想に対して寛容さを持って接する事も必要ではないか。そして石狩の発展を考える場合も創造的破壊の発想が必要ではないかと感じた。

②石狩は港湾と市街地が離れていることの、メリット、デメリットについて、質問が出されたが、両方あるがメリットとして住環境にとってはよいと思うが、新港勤務者にとっては色々不便さがある。これらのメリット、デメリットをつなげる方法として、職住接近で新港勤務者が狩市に住んだなら景色が変わる。住んでもらうためには子供を育てる優位性を作るべきである。
そして人の交流をきらないで置く事が大切である。

③新港勤務者の札幌からの通勤問題について発言され、住環境、教育環境等、総合的に考えると札幌に居を構えるほうがメリットがある。
等の発言があった。

Ⅱ時代が動く

1"いしかり"に思う

①事業家のチャレンジとしてのキーワード
●機会を活かす、強みを磨く
・地域ニーズを探す― 航路開拓と航路荷物を作るなど、港湾作業等
・地元主義にこだわるな― 札幌市場への進出、競争する意識
・官業への挑戦― 民間企業や市民が引き受ける事ができるものを探す。
・ものまねでは本物より良くならない― 技術の向上
●サポーターの形成
・なんでも役所というな
・民・民連携
・士業の役割―士業(中小企業診断士、会計士、税理士、弁護士など)が地域の向上に果たす役割を考える。

●金融機関の役割
・担保主義から脱却し、専門家との連携を構築しシュンペーターの言う銀行家の役割を果たすべきである。

②「住むこと」の強靭化
●過疎地問題への対応
●新港勤務者の移住作戦
●学習環境の向上

③石狩市の行政改革
④プラチナパワーの発揮
経験の蓄積に誇りを持つべき、何をやってきたかを大切にすべき

【まとめ】として3回の講座を振り返り次のように話された。
●第1回「不安の共振」は、いろいろな社会現象を通してひとびとを不安に陥れているものには、勿論、経済とやや遠い社会現象もあるが、経済面から見ると、一つに「長すぎて出口の見えないデフレ」である事は勿論だが、いまひとつ、いわゆる金融不安、財政不安の繰り返しは、「先進国に共通する病理」ないのかという問題提起をしてみた。
●第2回「製作の陥穽」は世界的に見ても経済政策は、そこに期待される作用とあまり考えたくない反作用が同居するという事を、アベノミクスのほかのいくつかの具体的政策について話し、この現象は、ひょっとすると経済の柱である資本主義、社会体制の柱である民主主義が、グローバル時代になって、新しい壁や崖或いはわなに遭遇しているのではないか、と言う、誠に雲を掴むような問題提起をした。
●そのうえで、本日第3回はアベノミクスの3本の矢、経済成長の柱とされる「イノベーション」について、いくつかの考え方をお話し、その視点を"いしかり"に引き寄せて眺めてみた。
最後にまとめとして次の2つの話しがあった。
第一点は、アベノミクスの第2の矢「機動的財政出動」の意味。
「機動的」意味は2つあると思う。当面は拡大である。しかし、将来的には「財政再建」でなければならない筈だ。その為にはやはり「増税」、「歳出の合理化」は避けては通れないと思う。株価が上がって、それで解決するような問題を抱えているのではないと思う。成長戦略はその為の地盤つくりでもある。
第2点は(資料により)世界の大きな流れについて
世界は、インターナショナルの時代からグローバル時代に移った。インターナショナルの時代には、「国益」と「国民益」とは概ね合致していた。従って民主主義が機能しやすかった。
その後、東西冷戦が終了し、アメリカはアメリカ基準のグローバル化を熱心に進めた。所謂「市場経済資本主義」であり、「民主主義」の輸出であり、その代わり「世界の警察」を引き受け、国際通貨として「ドル」が世界経済の血液であった。そんな「パックスアメリカーナ」」の時代は、それで多くの国がその恩恵に浴した。「パックス」の意味は「平和」であり、アメリカが繁栄すれば世界も平和で居る、という意味である。しかし、アメリカは、ニクソンショック、9.11等、その力に陰りが顕著になり、中国の台頭ばかりでなく世界は多極化した。そのなかで、地図に国境は存在するが、ヒト、モノ、カネは国境に関係なく世界を飛び回る時代になった。とりわけカネはもの凄い量のものが俊次に世界を駆け巡る。そうすると「分割の誤謬」、つまり、国益が必ずしも、例えば企業の利益と一致しない。そういう部分が生まれる。このことは、地域と地域企業や市民との関係でも生じます。
つまり、全回講座で最後にお話したように、グローバル化と国家主権と民主主義が並存できない時代を迎え、今はその迷い道に居ると見ることは出来ないか。暴論だろうか。

(資料) hyou2.bmp  

 

ではどうするのか。どうなるのか。私には、前回も申しましたが、人々はジグザグの迷い道を出来るだけ慎重に、かつ、個別の利益を主張する場合にも世界的な視点を持って望まなければならない、と言うことしか思いつかない。ただし次の危険は歴史が教えてくれているように思う。
●一つは「世界化」の進展とその行き詰まり生み出す「ナショナリズムの台頭」には注意深くありたい。現に地域紛争や、経済のブロック化、地域独立運動、領土問題など、その動きの契機は少なくない。このような世界の動きは地域にとっても無縁では無いと思われる。
●二つには、うまくいかない政治の反動は、強力なリーダシップ、決めてくれることへの国民の願望に繋がり、この間隔が、民主的な手続きに基づく「ファッシズムの台頭」ひいては、結果として「民主主義の危機」に遭遇する契機にならないか。
●三つには、「資本主義の変質」つまり「金融資本主義の進展」が実体経済と乖離して、その結果、人々に「働くことへの疑念」を生む、と言った問題が生まれないか。
●みなさんが、新聞を読む時などには、こんな枠組みを画きながらお読みいただく事も一考かも知れない。
と講座を終えられました。
3回にわたり今の社会における、経済問題、世界の経済観など多岐に渡りお話をありがとうございました。




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