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講座10 『旧石器、縄文、弥生の人類、そして文化』

第3回 「じつは先史文化はこんなに面白い~心の考古学事始め」

2013/12/06

 平成25年11月30日(土)講座10『旧石器、縄文、弥生の人類、そして文化』の第3回「じつは先史文化はこんなに面白い~心の考古学事始め」を行いました。講師は伊達市噴火湾文化研究所長で札幌医科大学客員教授、北海道考古学会会長の大島直行さん、受講者は41名でした。市民図書館が端末システムの更新で休館中でしたが特に使用を認めていただき、ロビーで講座を開催しました。受講者にとっても貴重な経験だったと思います。
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 「考古学は面白くない!」という逆説的な話しから講座は始まりました。遺跡発掘や縄文土器の分類などを行っている学芸員自身は面白いと思ってやっているが、一般の市民にとって考古学は面白くないのではないか。何をどうすれば考古学は面白くなるのだろうか?学者は土器の分類などを行っているが、縄文人は分類を考えて土器を作っていた訳ではない。縄文人の立場に立ってものを考えるべきだ、また、ものには別の見方があるはずだと考えた。

 まず、縄文クイズが出された。例えば、遺跡に関する問題として、なぜ「竪穴住居」を円く掘ったのか?なぜ「墓」を円く掘ったのか?なぜ「環状列石(ストーンサークル)や環濠」をつくったのか?等々。遺物の問題としては、なぜ土器を「深い鉢形」に作ったのか?なぜ土器に「縄」で模様を付けたのか?なぜ「中空」の土偶を作ったのか?等々。これらの問題はいくら考えても合理的な理由が見つからない。なぜなら、それは縄文人の「世界観=心」の問題だからである。

 合理性だけでは解釈できないことに気づき、縄文人の世界観を読み解こうとした三人の考古学者がいた。名古屋大学名誉教授の渡辺誠は、「縄文人の精神世界の中核は、"死と再生"の観念である」とし、「土偶は妊娠中の女性を象徴、再生のシンボル」と考えた。東京大学教授の設楽博巳は、「縄文人の思想は、豊かな生命力に対する祈り」とした。また、東北芸術工科大学教授の安斎正人は、旧石器時代人にも石器の石材の色から「色彩のシンボリズム」があると考えた。
 
 縄文人の世界観の中核には、どうやら「死と再生」の観念があるらしい。その観念は、動物や植物あるいは天体などになぞえられ、生活道具や祭祀道具の形や模様に"象徴(シンボル)"として表現されている。「死と再生」を形にする時に"象徴(シンボル)"が出てくる。「象徴=シンボリズム」は人類の遺伝的な認知システムであり、縄文人の世界観を解明するためには考古学だけではなく、脳科学や心理学などの多くの研究の助けが必要である。

 ヒトの脳には"小脳"、"脳幹"、"大脳辺縁系"と"大脳新皮質"がある。哺乳類になると"大脳辺縁系"で、知覚・感覚(視覚、聴覚など)や動物的本能(食欲、性欲、怒りなど)を得ている。人間などの霊長類になって"大脳新皮質"が得られ、そこで感情(喜び、悲しみなど)、思考と判断、言語機能などを得た。思考と判断の中の合理性(科学)、論理性(哲学)および創造性(宗教)などの「科学的世界観」は遺伝しないが、予見性(推理、未来、「死」)、錯覚(信念、観念、「死からの再生、復活」)、崇拝(信仰)などの"ものを信じる"という「神話的世界観」は遺伝するものである。したがって、縄文人の「世界観」は「大脳新皮質」でつくられ、我々にも遺伝していると考えられる。

 「人の心はどのようにつくられるのか?」ということについて、図1を使った説明があった。考古学者は神経心理学を学ぶことによって人の心(=神話的世界観)がわかるようになってきた。"死なない"という「錯覚」から、モノには魂があると信じ、アニミズムやシャーマニズム、トーテミズムなどが生まれた。
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 「人の心はどのように表現されるのか?」については図2にまとめられている。生まれながら無意識にもっている"元型"として "グレートマザー(太母)"があるが、これには生理や妊娠、出産、育児などがあり、これから「死と再生」がイメージされ、そのシンボル(象徴)として「月=子宮~蛇」が出てきた。これについては後述する。
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 それでは、シンボリズム(象徴)って何だろう?人間の意識の中にある抽象的な概念(イメージ)や形のない事物の印象をより具体的な事物や形によって表現(置き換え)することは、人間が生まれながら遺伝的にもっている認知能力である。こうして表現されたものが「シンボル(象徴)」です。例えば、平和の象徴は鳩、速さの象徴が飛行機や新幹線です。すなわち、人間は「イメージとシンボル」で物事を認知(理解)しています。

 「イメージとシンボル」から生み出される神話的世界観においては、「肉体は死ぬ」という現実を知り、そこから「死にたくない」という願望が生まれ、「肉体が死んでも魂は死なない」あるいは「よみがえる」という錯覚が生じた。そこから「死(消える)」と再生(よみがえる)」がイメージされ、その具体的なものとして「月」が出てきた。月を「死と再生」のシンボルとし、さらに「月」と同じような「死なないもの」を見つけて「死と再生」のシンボルとすることで、子宮(女陰)と蛇(男根)が出てきた。子供は子宮の「水」の中で生かされ、生まれてくる。すなわち、月は女性であり、月は水をもたらし、月の水を運ぶ使者が蛇であると考えた。このようにして、「月のシンボリズム」を基盤とした「神話的世界観」ができあがった。

 縄文人の神話的世界観をもとに「月のシンボリズム」で土偶を読み解くと、どのようになるか。図3の写真を見て次の疑問がわいてくる。土偶の顔はなぜ上を向く?土偶の口はなぜ丸い?土偶のヘソはなぜ目立つ?土偶の体はなぜ空だ(中空土偶)?それは、土偶も土器も月の水を集める容器で、女性(子宮)に見立てられていると考えると理解できる。土偶の頭には穴が空いていて、月の水を集めるようになっている。その水を運ぶ蛇の模様もつけられている。図4の土偶の頭には月のシンボルである"うずまき"の模様がある。
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 図5の土器の上部にある縄の模様は月の水を運ぶ蛇であり、下部の丸い円は子宮を表している。
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 「月のシンボリズム」は現代人の我々にも遺伝されている。神社のしめ縄は蛇のセックスをレトリックしており、社殿の参道(蛇)と本殿(窓がなく、子宮そのもの)の配置は子宮に月の水を運ぶ蛇を表現している。生活の中にも生きており、水を飲む時に我々は「蛇口」をひねる。蛇の目傘や蛇の目茶碗などもある。また、子供がダンボール箱に入りたがる奇妙な行動は、ダンボールを「子宮」に見立てると理解できる。

 以上、非常に興味深いお話しでした。さらに詳しく知りたい人は12月末発刊予定の「月と蛇と縄文人~シンボリズムとレトリックで読み解く縄文の心」(大島直行著、寿郎社)をご覧下さい。

 予定時間を30分も超過し非常に熱意を込めてお話しいただきました。講師の大島先生には大感謝です。受講者の皆さんからも以下のような感想をいただきました。
・大島先生の話しは大変面白かった。土器、土偶の見方がよくわかった。
・一言ももらさず聞き入りました。本当に新発見でした。また、もう一度、聞けるチャンスを作って下さい。
・この続きを再度聞かせてほしい(時間をかけて)。
・縄文人の脳の働きと現代人の脳の組織は同じである。縄文人の生活が少しずつ理解出来てきた。大島先生 の解説がとても分かりやすく、楽しい。縄文人の作る土偶の意味が分かり、今後土偶を見る目が変わるだろ う。




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