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藤女子大学・いしかり市民カレッジ共催講座 『これからの社会保障は大丈夫?』

第1回「介護・医療・年金の現状」

2013/02/26

 2月21日(木)藤女子大学・いしかり市民カレッジ共催講座「これからの社会保障は大丈夫?」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、社会経済学、社会思想史がご専門の藤女子大学人間生活学部教授の内田 博さん、受講者は、28名でした。

 内田さんは、先ず「2週に亘って年金を中心に社会保障のお話をしますが、今週は、社会保障の前提がどうして壊れてしまったのか、次週は、それでは、前提が壊れてしまった社会保障をどうしたら良いのか、国はどう考えているのか、またそれ以外の対案はないのかについてお話します」、と前置きされ、「実は、今日のお話は明るいか暗いかと云えば、暗いです。さらに次週も、うまくいくと明るくなる可能性がないわけではありませんが、ちゃんとやらないと暗くなります」と受講者の笑いを誘ってお話を始められました。
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 以下は、お話の概要です。

貧困についての考え方
・従来は、貧困は、自己責任(怠けるから貧困なのだ:堕民論)だと考えられていた。
・それが、19世紀の大不況期になり
産業の構造不況が起きて、雇用不足となり、貧困が社会問題となった。
貧困は、個人の問題ではなく、社会問題だから、なんとか対応しようと云う考え方が生まれた。
その対応策として、19世紀末~20世紀初めに社会調査が行われた。
その結果、貧困の最大原因は、失業であることが分かった。
・個人が頑張る事の出来る条件を作らなければいけない、と考えられるようになった―これが社会保障の基本的な考え方。
イギリス ウェッブ夫妻のナシュナル・ミニマム論(国民の最低限の生活を保障する)
最低限の生活が出来るよう保障されれば、社会の中に自分の居場所ができ、あとは自分で頑張れる。
自分の力で頑張れるだけの基盤を作るのが、社会保障。

社会保障と云う言葉
1928年の世界恐慌の後、アメリカで生まれたSocial Securityの訳語が社会保障である。
世界恐慌の後で、貧困と云う危険因子の暴発を抑止し、社会秩序の安定をはかる必要が生じた。また、社会秩序の安定を図らなければ、社会主義革命を助長するとも考えられた。
 
社会保障政策の基本
・基本は、国民の貧困化を抑止すること―防貧。社会保障は、弱者を救済するものではなく、弱者を生まないための制度。
・防貧を補完するのが救貧(公的扶助―生活保護)。貧困な国民の生活を支援し、自立に向けて援助するもの。

日本の社会保障体制
・社会保険(社会の中で各人の居場所をつくるためのもの)
医療、介護、年金、雇用の各公的保険。
・公的扶助(居場所をつくるための支援をするもの)
生活、生業、医療、教育、住宅など
・社会福祉サービス(上記以外に特別な支援が必要な人のためのもの)
高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉など

日本の社会保険制度
原則として、被用者か自営業かで大別されていて、仕事の無い人のためには考えられていない(制度が作られた当時は、専業主婦以外の無業者は極少数だった)。

・被用者:健保と厚生年金(あるいは共済)、介護保険+雇用保険、労災保険
・被用者以外:国民健康保険、国民年金と介護保険
ところが現状では、原則から外れた住民が増加している(専業主婦以外の仕事が無い人、仕事があっても保険をかけられない人)―制度設計当時の社会状態とのずれが生じている。

社会保障制度設計の前提
・基幹産業は、重化学工業
・高賃金・長期安定雇用の一般化
・大衆消費社会=中産階級の増大―所得格差の縮小
・将来の生活リスクに備える国民

日本は、このような社会の実現を目指す中で社会保障制度を構築した。

制度設計の前提になったのは、次のような社会。
・探せば良い仕事がある(失業率1%程度)。
・一生懸命働けば、会社も大きくなり、自分も昇進し、給料もあがる。
・ワーキングプアは極少数、無業者はほとんど専業主婦で夫とコミで社会保障を受けることができる。

社会構造の変化
資本集約型産業を基幹産業とした時代(制度の前提)から、知識集約型産業の時代へと変化した。

制度設計と現実のズレ
・産業
資本集約型産業に代わって中心となった知識集約型の産業は、産業規模に比べて雇用力が小さい。
※先端産業で、雇用力の大きな産業は、医療、教育、福祉であるが、日本ではこれらにはお金がかけられていない。

・雇用
一部エリートは安定雇用だが、その他は不安定雇用。その中間では、正規雇用の非正規化が進行している。

・所得
不安定雇用の結果、低賃金となっている。(勤労者世帯の所得は20年間低下している。)

制度設計と現実とのズレは
・働きたくても、良い仕事がない。
・働いても収入は伸びない。
・将来の生活リスクに備える余裕はない。
即ち、防貧の前提が破綻しつつある。

年金について
そもそも、年金は、自分が払った保険料で賄われているものではない。現世代が払う保険料で賄われている。このシステムが成り立つためには、所得が上がり続けることが前提であるが、現在、勤労者世帯の所得は20年間下がり続けている。
保険料を支払う側からみても、高所得エリート層は、社会保障は不要なので保険料を払わない、低所得層は、社会保険が必要であるが、保険料を払えない、と云う形になってきている。
このように、年金の前提が崩れてきているので、状況は厳しい。
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 今日のお話は、社会保障と云う考え方が、どうして生まれたのか、社会保障制度は、どう云う前提で設計されたのか、そしてその前提がどうして壊れてきているのか、と云うことが良くわかるものでした。最初に内田さんが前置きされたように、あまり明るいお話ではありませんでしたが、次回のお話では、果たして光明が見えるでしょうか?







 



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