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主催講座1「流通最前線の今を知る~最近の食品の消費・流通動向と企業戦略~」

第2回「環境変化に対応した流通戦略とその取り組み」

2021/05/25

 本年度の主催講座1「流通最前線の今を知る」の第2回目は「環境の変化に対応した流通戦略とその取り組み」をテーマに5月6日(木)花川北コミュニティーセンターにおいてカレッジ生等41名の参加を得て開催しました。
 講師は道内大手小売業を代表するコープさっぽろの横澤秀明さんにお願いし、現場の第一線で日々戦っているホットな情報と各種取り組みについて貴重なお話を伺いました。
 以下は、過去に遭遇した幾多の経営危機を乗り越え、運営体制を革新。地域貢献と組合員のための組織運営に努めながら経営再建を成し遂げ大きな躍進を続けているコープさっぽろさんの現場報告の概要です。

横澤 秀明さんの略歴
 1971年に生協に入協。農産担当バイヤー等を経て15年ほど店長を務め、道東を主体とした地区本部長を15年ほど経験したあと店舗本部長・組織本部長を歴任。現在は専務補佐として協同組合間提携・大学提携・ユニセフ・SDGs事務局などに携わっている。趣味はツーリング。71歳。
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《講演の概要》

コープさっぽろの生い立ちと幾多の苦難を経て
 コープさっぽろは今から56年前の1965年、それまであった北大生協が地域生協へと拡がりを見せるなか誕生した。
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 その後、コープさっぽろの経営は3度の困難に見舞われた。北海道価格の打破、食品添加物と安全性などを掲げてスタートしたものの1971年に高速成長路線が破綻し、財務状況の悪化により4億円ほどの資金ショートが発生、全国の生協の支援で乗り切った。その後1990年代からのダイエーやイトーヨーカドーなど大手流通資本のGMS戦略※に対抗し店舗の大型化を進めた結果、規模拡大の過剰投資による資金ショートを招き96年に二度目の経営危機に陥った。(※ゼネラルマーチャンダイズストアの略  スーパーマーケットとは異なり、食料品や日用品のみならず、衣料品や家電・家具など、様々な商品を総合的に品揃える。)
 三度目の危機として、2003年には地域経済の悪化等により経営危機にあった釧路市民生協の救済のための統合による経営問題があった。
 こうした度重なる危機に遭遇するなか、北海道がひとつになった「コープさっぽろ」づくりに向け、コープ十勝、道央市民生協などとの統合を実現。旭川の旭友ストアなどの経営破綻に際しては商系地域スーパーの事業継承を進めながら、組織全体の運営の合理化等による経営の強化に取り組んできた。
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食料品に特化した事業に専念
 かつては支笏湖レイクサイドホテルや石狩の農場経営など多角的事業を手掛け過剰投資を招いてきた反省をもとに、身の丈に合った投資を基本として愚直なまでの正直な対応と情報公開を徹底。医療品や家電品等の取り扱いをすべてやめ、「食」を軸としたスーパーマーケットとして食料品に特化した営業に専念しながら、地域「北海道」に役に立つ様々な事業に取り組んできた。
 生協は、公的な組織でもなく株式会社でもなく社会経済の組織であり、持続可能な事業と活動を進める協同組合であることを改めて確認したところである。
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コープさっぽろのミッション
 コープさっぽろのミッションは「安心」と「革新」であり、超高齢化社会に道内のどんな過疎地でも生活できる食のインフラになるほか、循環型社会への貢献などを当面のミッションに掲げている。
 大きな目標を「宅配の強化」に重点を置き、宅配利用54万世帯目標に対し現時点で40万世帯まで拡大した。組合員数210万人(道内総世帯の80パーセントに当たる)目標に対しても間もなく200万人に届く段階となった。
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 もうひとつは「つなぐ事業と活動」であり、人と人をつなぐ事業・人と食をつなぐ事業・人と未来をつなぐ事業の3つのミッションを掲げながら様々な事業展開を行っている。
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 事業の実績は、2020年度ベースで店舗事業1,917億円、宅配事業1,041億円と初めて1千億円を超えた。総取扱高では3,043億円を挙げるまでとなった。
 そして21年度はコロナ禍にあって売上が更に伸長するに至っている。
 コープさっぽろでは、3年に一度組合員を対象とした意識調査を実施しているが、そのなかでスーパーとしては知られているが生協組織であるとの理解度が低く、我々の大きな弱点であることも分かった。やってみたい活動としてはスポーツ・趣味・地域イベントのニーズが強く、食生活ではアレルギー・栄養・塩分などについて関心が深いことが分かった。こうした組合員の意向も踏まえ取り組んでいきたいと考えている。
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避けて通れない北海道の人口激減の時代
 北海道は人口激減の時代を迎え、地方がなくなる縮小再生産の波が押し寄せてくることは避けて通れない情勢となっている。
 激減する市町村人口・激化する少子高齢化・一人世帯の急増・可処分所得の減少・子供の貧困など、問題が山積しておりこれらの問題にどう対処するかが業界共通の大きな課題である。
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 流通競争下の道内の状況をみるとイオン・アークス・コープの3極の戦いで寡占化しており互いに切磋琢磨している。
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 今、食品流通の分野で何が起きているか。   
 食品販売額の予測をみると我が国全体そして北海道でもこの先、食品業界の販売額が減っていくと推計されている。その中でスーパーやコンビニは全国的には増加予測であるものの道内では減少見込みとなっている。道内のコンビニは人口当たりの店舗数が全国一の激戦区となっている。ツルハなどのドラックストアはコンビニの出店率を超えており、年々食品の取り扱いを拡大し低価格戦略で集客につなげている。スーパーにとっての強敵はコンビニだったが今ではスーパーの強敵はドラッグ。まさに業態間競争が激しくなっている。
 EC(エレクトロニックコマース=電子商取引)市場は、アマゾンに代表されるように居ながらにして買えるネット販売市場が更に拡大するとみられる。こうしたEC分野にコープの宅配も入っている。
 今後はストア間競争からアマゾン等のネット販売との闘いになっていくとみられる。
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コロナ禍のなかでの変化
 コロナ禍の今、小売業の変化を受け止め社会インフラとしての店舗での対応と併せ、店が無くとも顧客のより豊かな生活・需要を補っていくこと、店舗と宅配とのコラボで取り組んでいく必要がある。
 コロナ禍、アマゾンがダントツの売り上げを挙げておりアマゾンと小売業の戦いが顕著となっている。家庭内需要(家食)に支えられ2020年のスーパー業界は前年比105%と売り上げを伸ばしている。コープさっぽろも例外ではなく特に宅配が117%と急成長した。

激戦の環境を生き抜くための取り組み
 EC需要の増大等のなかで激戦の環境を生き抜くために店舗としてやることは何か、コープさっぽろの「おいしいお店」の取り組みについて話したい。
 コープさっぽろは全道に108の店舗があるが、2001年以降、食に特化した「おいしい店」づくりに取り組んできている。
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 そのベースにあるのは一個(バラ)からの品揃えと「ハレ」に強い品揃えである。
いくつかを紹介すると
①毎日買い物に来ていただくため、生鮮食品1個からの品揃え実現
②原料・品質等にこだわった商品の拡大
③組合員の声が反映された高品質商品の拡大
 (競合店とは95%は同じ品揃え、残り5%で独自商品)
④売るべき重点商品を中心としたSKU(提供商品の単位)で地域一番の拡大
⑤年間52週のMD(マーチャンダイジング=商品政策)に基づく変化ある売り場づくり
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⑥ハレ(晴れ)の日に強い品揃え追求
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⑦出来立て・作りたての商品提供努力
⑧地方には地方の商品の取り扱い促進(地産地消)
⑨トレサビリティ等、顔の見える商品の拡大
などの様々な取り組みがある。

「おいしいお店」に関連したその他の取り組み
「おいしいお店」に関連したその他の取り組みとしては
①電子マネー・組合員証一体型カードの導入
②移動販売車の取り組み 売上20億円
(買い物難民対策として2010年から運行、90台の寒冷地仕様車が126市町村で対応、2.5万人が利用)
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③2017年からのアニマルウェルフェア※の取り組み 平飼い卵の全店舗展開等
(※アニマルウェルフェア=快適性に配慮した家畜の飼養管理)
④4年目を迎えた「店長と行く感謝のバスツアー(食育体験等)」
⑤全道での「お魚料理教室」の実施
⑥コープ店舗での小学生を対象とした「子ども職業体験」
⑦「ちょこっと茶屋」による高齢者向け地域社会貢献
⑧コープ未来の森プロジェクトによる植樹活動
(ノーレジ袋運動と連動、レジ袋字体分の財源を積み立て森づくり基金に)
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 このように様々な取り組みを継続実施している。

「生き残るために何をなすべきか」
 次にこの間成長を続けているコープさっぽろの「宅配トドック」のことについて話をしたい。
 ラストワンマイル。流通業界再編のなかで「生き残るために何をなすべきか」という動きを見たのが別図である。こうした動きの中でコープさっぽろは着実に宅配事業を進めてきた。
 商店街や百貨店・GMSなどは既に衰退業態となり、コンビニやスーパーも今は安定業態と言われているが、今後は間違いなく宅配やダイレクト・マーケッティング等が成長業態となっていくという見方がある。これからはEC利用に大きく傾いていくとみられる。
 とくに2016年以降のアマゾンの台頭等によってEC利用が急速に拡大しはじめ、20年からのコロナ禍での新生活により、さらに大きな需要変換が進んだ。
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成長を続けている「宅配トドック」
 コープの宅配トドックがどのように成長してきたかを示したのが別表である。
 30年ほど前にスタートした協同購入の取り組みは、1997年から個配が始まり、全道の生協統合で規模が拡大、06年に現在の「宅配トドック」を誕生させ、今日に至っている。
トドックのキャラクター「白熊さん」を核としたブランド戦略も強化、旭山動物園など道内の4動物園との連携による「ホッキョク熊支援プロジェクト」などにも取り組んでいる。
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コープさっぽろとしてのSDGsへの取り組み
 ここからコープさっぽろ全体で取り組んでいるSDGs(持続可能な開発目標)のことに触れたい。
地球が悲鳴を上げている」
 子供や孫たちの世代の前に2030年までにやるべきこととしてのコープさっぽろとしての取り組みである。
 全国の生協は2018年の日本生協連の総会でしっかりSDGsに取り組むことを決議した。道内では道や札幌市、ホクレン・ぎょれんや大学など17の団体で「北海道SDGsプラットフォーム」を設立し、協同連携していくこととしている。
 SDGsへの取り組みはコープさっぽろのミッション「つなぐ活動」と相通じる点がかなりある。
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具体的な取り組みとしては
①マイボトルを当たり前にしていくことやプラスチックごみ問題のほか海の清掃活動
②食育研究会を通じた「学ぶ機会」の創出
③災害と原発を学ぶ活動(脱原発学習会等)
④台風被害等の災害支援活動としての緊急募金活動
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⑤ユニセフの指定募金活動を通じたインドネシアの識字率向上プログラム。ブータンの水と衛生プロジェクト支援は10年継続した
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 このほか、ロヒンギャ難民緊急募金、コロナ禍での途上国へのマスクの提供運動などへの支援もその一つである。

最後に
 以上がコープさっぽろの歴史と各種事業の取り組みの概要である。
 最後にお話ししたいことは
「2030年に向けて何をされますか。自分の出来ることは何か、一つ行動にしてみませんか」ということである。
 子ども・孫世代に矛盾を取り残さず、誰一人取り残さず、持続可能な北海道をともに造っていければと思う。
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【受講者アンケートから】
〇いつも素晴らしい対応で講座を開催して下さりお礼申し上げます。コープさっぽろさんの詳しい歴史を元本部長の横澤秀明様の説明と本当の内部資料等、経営方針の内容を考察させていただき感動いたしました。ありがとうございました。
〇コープを日ごろ利用させて頂いていますが、本日の講座で色々な取り組みに市民と一緒に頑張っていることに敬意を表します。今後とも一層の頑張りを期待します。
〇時代の変化に対応していろいろ大変なこともあったことが分かりました。営利会社ではない協同組合のコープはこれからも頑張っていただきたいと思っております。特に花川北地区では唯一の大型店でいつも利用させてもらっています。大変勉強になりました。ありがとうございます。
〇コープさっぽろの創立、そして発展と挫折を経験しながらコープの使命をしっかり踏まえて進んでいることが分かりました。




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