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主催講座13「食と健康の関わりを考える」

2019/12/05

11月29日(金)、主催講座13「食と健康の関わりを考える」を花川北コミュニティセンターで行いました。講師は、北海道大学大学院 医学研究院 教授の玉腰 暁子さん、受講者は50名でした。

玉腰さんは「みなさんこんにちは、私はみなさんが健康にくらすにはどうしたら良いかを研究する公衆衛生学を仕事としています。ところで、今日は朝ご飯を食べた、と云う方はどのくらいいらっしゃいますか」と言ってお話を始められました。すると、さすがにこの講座に参加するだけあって、ほとんどの方が手を上げました。
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以下は本日のお話の概要です。

1.食事について
・一日3食食べるとすると1年で1,095食、80年生きると29,200食になる
・私たちは、食べたものによって活動する(エネルギー、呼吸)
・だから食べることが大事
2.日本人の平均寿命と健康寿命
◇平均寿命
現在日本人の平均寿命は、男性は80歳を超し(世界で3位)、女性は90歳に届きそうな状況(世界で2位)。
◇健康寿命
定め方はいくつかあるが、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。平均寿命との差が男性で8~9歳、女性で12歳くらいある。そして少しずつだがその差が拡がってきている。
これは都道府県によっても違う。北海道はやや差が大きい。
3.介護状況とその理由
1)介護者数
介護認定を受けている人は、600万人(平成25年)くらいで、数は年と共に増えている。
2)健康寿命・介護予防を阻害する要因
・肥満(メタボリックシンドローム)⇒心筋梗塞・脳卒中
・低栄養/フレイル(体が弱くなっていく状態)
・運動器症候群(ロコモティブシンドローム)
・認知症

ここで、玉腰さんが日頃どんな方法で研究されているかについての紹介がありました。
・みなさんからどんな生活をしているかと云う情報をもらって、それが将来発生する病気とどんな関係にあるかを研究している
・色々なパターンの研究を組み合わせて行っている
・人をグループとして比較研究している
・どうして、このような人を対象とした研究が必要かと云うと、ヒトのことはヒトでしか分からないから(動物実験ではわからない)
◇コホート研究について
・ある要因を持っている人々(例えばチーズを多く食べる人と食べない人、など)の健康の経過を見守っていくやり方なので、時間がかかる
・研究の結果を見る時には、どんな人を対象とした研究なのかを注意することが大事(性別、年代、など)
・コホート研究では、人々が生活しているその結果として病気の発生を見ているので、結果が設定した要因によるものかあるいは他の要因によるものか(例えば、チーズをたくさん食べる影響だけでなく、そういう人はよく運動しているなど別の生活習慣の影響もありうる)を検討する必要がある
※何々が何々に効く、と云う情報があふれているが、確かに効いたとしても、他に悪影響はないのか、についても考える必要がある

研究方法についての紹介の後は、再び食事と健康の話に戻りました。

4.日本的な食事と予後
・日本人の長寿を支える「健康な食事」
主食:精製度の低い米や麦等の穀類を利用した主食。炭水化物は、40~70%であること
主菜:魚介類、肉類、卵類、大豆・大豆製品を主材料とした副食。たんぱく質は10~17gであること
副菜:緑黄色野菜を含む2種類以上の野菜(いも類、きのこ類・海藻類も含む)。野菜は、100~200gであること
主食、主菜、副菜をバランス良く摂取することが大事。
・国民健康・栄養調査2015
主食、主菜、副菜の3つを組み合わせて食べることが1日に2回以上あるのは週に何日あるか、と云う質問に対して、ほとんど毎日と答えた人は、高齢者で60%、若い世代では40%。逆にほとんどないと云う人が若い男性世代で20%くらい、女性でも10%強いる。
現代は、バランスの悪い食事をとる人の率が増えてきている。
・果物、野菜摂取頻度と総循環器疾患死亡(野菜を摂ることは良い事か)
果物、野菜を摂取する量が多いと、循環器疾患死亡が少なくなる、と云うデータがある。
・北海道の野菜収穫量と野菜摂取量
収穫量は全国一なのに、摂取量は下位。
また、北海道では野菜と云うと、イモ、南瓜、トウモロコシの名前があがるが、葉物野菜等他の野菜を食べることも必要。
・たんぱく質の摂取について
たんぱく質の摂取が少ないと、生存率が低くなる。高齢者は、たんぱく質を摂ることが必要。
また、近年たんぱく質の摂取量が減ってきている。
5.運動器症候群(ロコモティブ シンドローム)
・ロコモティブシンドロームとは、「運動器の障害」により「要介護」になるリスクの高い状態になること。
・ロコチェック
①片足立ちで靴下がはけない
②家の中でつまずいたり滑ったりする
③階段を上るのに手すりが必要である
④横断歩道を青信号で渡りきれない
⑤15分くらい続けて歩けない
⑥2㎏程度の買い物を持ち帰るのが困難である
⑦家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろし)が困難である
あてはまる人は、要注意。
・ロコモの原因
運動器自体の疾患と加齢による運動器機能不全
さらに、筋力の低下、バランス能力の低下、骨や関節、筋肉の疾患などが原因となる。
たんぱく質の摂取不足(動物性たんぱく質―牛乳、たまご、肉、魚。植物性たんぱく質―ごはん、大豆製品、パン、じゃがいも)は問題。
6.日本的な食品摂取とその後の総死亡リスク
大豆、魚、野菜、きのこ、海藻、果物など日本的な食品をバランス良く摂ると、死亡リスクが下がる。
7.塩分と健康
・尿中のナトリウム量を測ることで前日摂った塩分が分かる。塩分が多いと血圧が高い。
・日本人は、まだまだ塩分を摂りすぎている
日本人成人男女の平均摂取量(2012年):10.0(g/一日)、「日本人の食事摂取基準」男:8.0、同じく女:7.0、日本高血圧学会がすすめる上限:6.0、WHOがすすめる摂取量:5.0、ノーソルト・カルチャーの民族の摂取量:3.0、必要量(推定値):1.5
8.「何を」「どれだけ」食べたら良いか
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※つ(SV)は、料理の分量を数える単位
9.高齢期の肥満(メタボリックシンドローム)と低栄養
①肥満(メタボリックシンドローム)
・肥満は、生活習慣病につながる
・肥満度は、BMI「体重(㎏)÷(身長《m》)の2乗)」で計る
・日本人食事摂取基準(2015版)で目標とするBMIの範囲
18~49歳:18.5~24.9
50~69歳:20.0~24.9
70以上 :21.5~24.9
・高齢者におけるBMIと死亡リスク
BMIが高いと死亡率が高いが実はBMIが低い方でも死亡率が高くなっている。特に65歳以上になると、肥満よりも痩せの方が問題となる。やせてきたら要注意。
10.フレイル(虚弱)
チェック項目
①体重減少
②疲れやすい
③歩くのが遅くなった
④握力の低下
⑤身体活動量の低下
加齢に伴う変化
①食欲の低下
②活動量の低下(社会交流の減少)
③筋力低下
④認知機能低下
⑤多くの病気
その結果、栄養が不足したり転びやすくなったりして、結果的に閉じ籠ってしまうようになる。まわりの見守りが大事。
※毎日、体重をチェックしましょう!
11.食べているものや食べ方とその後の健康
①朝ご飯を食べているか
朝ご飯を食べないと、やや体重減少、摂取エネルギー減少などの傾向があるが、その他の生活習慣なども関わるので一概には決めつけられない。
②コーヒーと総死亡・がん死亡
コーヒーを飲むと、総死亡率やがん死亡率(特に肝がん)を下げると云うデータがある。しかしコーヒーの効果以外に、水分の摂取量や生活習慣が関係している事も考えられる。コホート研究においては、長年の積み重ねが必要であり、コーヒーと死亡の結果もコホート研究が始まった30年前頃の人たちのデータ結果と云えるので、現代のデータとしては一考を要する。
③飲酒
飲量3合くらいまでは、死亡率を下げるが、外で飲む時は危険が増すので注意。
④食べ方
・一人の食事は、うつになるリスクが2.7倍増す。また、同居していても一人で食べのは良くない
・食べ方
腹いっぱい、早く食べる人は、腹八分目でゆっくり食べる人に比べて肥満リスクが3倍になる。
⑤すこやか北海道21(改訂版)
北海道民がより健康になるためのいくつかの目標を設定し、活動を進めている。栄養に関する目標は、適性な栄養摂取を進め、肥満や若年女性のやせをへらす。道民が栄養バランスのとれた食生活をできるよう食環境の整備を推進する。

以上が本日のお話の内容ですが、玉腰さんは最後に、「食から健康に」と云うお話で、本日の講座を締められました。
・老化予防をめざした食生活指針14ヶ条
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健康は目的ではない⇒健康でいて何がしたいか?
・〇〇を止める、より、〇〇を取り入れる
・ポジティブに、自然に
・身体によい食べ物、身体によい食べ方の気づき⇒そのためにはどうすればよいか?
・良いものを提供する⇒北海道からの発信?

その後いくつかの質問があり本日の講座は終了しましたが、講座タイトルにあるとおり、「食と健康の関わりを考える」ために、大変示唆に富むお話でした。私達も本日の内容を日常生活の中で活かして、少しでも健康寿命を延ばしたいものです。
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お終いに、受講者から寄せられたコメントをいくつかご紹介します。
「食事のとり方や生活面で参考になる講座でした。豊富な情報や研究で積み重ねた専門的な話を次から次へと出して頂き、良かった。再度同様な講義を受けたい。期待しています」
「食がいかに大事かと云う事が分かり、これからも体に気を付ける食事を心がける様に努力します。ありがとうございました」
「考えさせられるお話、本当によかったと思います。最後の老化予防食生活指針14ヶ条にすべて集約されており、これから心がけて生活していこうと思います」
「健康が目的ではなく、日々楽しく豊かに過ごせるように、食事はもちろん外へ行くこと、仲間や孫たちと時々会食することなど、心がけたいです。夫が心を込めて育てた野菜を私が日々手作りし魚も肉も野菜もバランスの良い食事を積み重ねていきたいです」
「『動物実験の結果~』と云う情報を得ても、人間を対象に出しているのだからと思い、そのまま私達に適応すると受け止めていました。確かに、どういう内容の実験か、チェックが必要であると気づきました。『65歳以上なら、肥満を恐れなくて良い』と。大変うれしい言葉でシアワセ!昔は、コーヒーの飲みすぎは癌になると言われたのにと思いながら、毎日3~4CUP飲んでいます。これも、シアワセ!」
「基本は、バランスの良い食事を意識する事。そして適度の運動とタンパク質が不足しない様に。一方通行のサプリCMに注意する事。食欲は大事と思いました」
「とても詳しい内容の講座で大変満足し喜んでいます。ありがとうございました」










































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